ゆううつ部部長のOB訪問 東藤泰宏 イラスト:ヨシムラマリ

第5回後編 35歳男性漢方薬治療商社マン

今回お話を伺ったのは、
35歳男性商社マンの吾郎さん。
過労や生活リズムの変化、
プライベートな問題などが重なり、
自律神経の不調から
うつ病へと発展してしまったそうです。
後編は、漢方薬を使った治療にも
触れた回復編です!

吾郎さん
吾郎さん
・年齢:35歳
・前職:商社マン
・うつ歴:1年半
・漢方薬で治療
・物腰が丁寧
・細めのスマート会社員

※本連載ではプライバシーを守るため、名前はすべて仮名とさせていただいております。

うつ病と引っ越し

吾郎さん:
引っ越しは、重かったですけどね。
東藤:
うつ病での引っ越しは大変ですよね~。
吾郎さん:
もう「うがー!」っていう感じでした。
東藤:
どのへんがつらかったですか、引っ越しのときは。
同棲するための引っ越しですか?
まだバラバラですか?
吾郎さん:
そのときはもう結婚の話も進んでいて、
新しく二人で住もうという話だったので、
二人で住むための部屋を探していました。

探すのがもう、つらいですよね。
物件や家具を、膨大な情報から絞り込んで、
っていう作業が結構大変じゃないですか。
無数のものと比較して、とかって。
それがもうしんどかった。
東藤:
そうですよね。
うつ病になると「ひとつだけ選択する、選ぶ」
という作業がつらくなるので。
選ぼうとすると、頭が真っ白になってしまう。
自動販売機でお茶を買おうとしても、
どのお茶にすればいいかわからなくて、
5分くらい立ち尽くしたことがあります。
吾郎さん:
家具とか、いろいろなものを買うときも、
どれかに決めなきゃいけないのがすごくつらくて、しんどくて。
だから、ぼくたちの場合は、最後だけ彼女にやってもらっていました。
東藤:
それをしてもらえると助かりますね!
吾郎さん:
「3つに絞りました。最後にどれがいいか決めてください」みたいな。
東藤:
いいコンビネーションですね。
ぼくも次の引っ越しはだれかに選んでもらおう(笑)。
吾郎さん:
それ以降家具を買うときはいつもこのパターンです(笑)。

うつ病と漢方薬

東藤:
ところで、漢方の話が聞きたいんですが。
吾郎さん:
そうですよね、わたし漢方なんですよね。そうなんですよ(笑)。
わたしも最初に病院を探すときは、そんなに知識がなかったんです。
ただ、うつ病になる前から西洋系の薬には弱かったんですよ。
東藤:
弱いというのは?
吾郎さん:
弱いというか、副作用が出やすいみたいで。
それがきつくてしんどかった経験があったので、
風邪をひいたら漢方で自己治癒力を高めて
病気を治していたんですね。
それと同じノリで、とくに深く考えずに漢方を服用していました。
東藤:
最初に、自律神経失調症だよって言われた病院が、
漢方治療のところだったんですか?
吾郎さん:
そうですね。
最初に心療内科を探したときに、
いくつか出た候補のひとつとしてそこがあったので、
じゃあちょっと行ってみようかと。
漢方が合わなかったらほかの病院に行ってもいいしね、
という感じでした。
東藤:
漢方だけで処方してくれる病院っていうのがそもそもあるんですね。
それを知らなかったです。ちなみに、漢方薬って保険はきくんですか?
吾郎さん:
ききますよ。薬代も多分安いです。
いま2週間分出してもらって、たしか1000円とか、
そんな感じですよ。
東藤:
安っ!
吾郎さん:
安いですよね~。
東藤:
超安い。
体調が良くなってて、出す量が減ってるってことを考えても
安いですよね。
吾郎さん:
うーん、やっぱそうですか。
ちなみにいくらぐらいするんですか?
ちゃんと抗うつ剤を処方してもらったりすると。
東藤:
人によって違うと思うんですけど、ぼくの場合は月に8000円くらい。
吾郎さん:
そこまで行くんですね。

東藤:
副作用って全くないんですか?
吾郎さん:
多少はあります。
でも、わたしの場合はそんなに強くは出ませんでした。
飲んだあとちょっと気持ち悪いなーと、
軽く吐き気が出ることはあるんですけど、
あとはとくにないです。
東藤:
普通の抗うつ剤って副作用がけっこう激しいんですよ。
吾郎さん:
そうらしいですね。
絶対自分は副作用が強く出るだろうなと最初から思っていて。
そこから抜け出すのも大変だろうし、
それだけでも自分はダメになりそうだなって。
東藤:
うん、人によってはそうかもしれません。
吾郎さん:
体質にもよりますからね。
漢方は即効性もないし、効果も目に見えて、
というわけではないので、もっと症状が強い人には
向かないかもしれません。
わたしの場合も、本当にその薬がきいて回復したのかどうかは、
正直わからないですしね。
東藤:
うつ病の症状が出はじめてから、1年半経っていますからね。
吾郎さん:
はい。だから、自然回復なのか、薬がきいたのかっていうのは、
正直何とも言えないです。とはいえ、薬を飲み始めて、
あー楽になったなって感じることはよくあったので、
それなりに意味はあったと思います。
東藤:
はい。

 漢方のお話をまとめると、
・副作用→人によるが少なめ
・値段→安い
・即効性→なし
・効果→多分あり
という感じ。もちろん、お薬は人によって効果が違うので、参考までに。あまり症状が重くなく、副作用が出やすい人は、漢方を試してみるのもひとつかもしれません。
 ぼくは個人的に、妊婦さんがうつ病になったときにいいかもしれないなと思っています。今主流の新しい抗うつ剤で子どもにどんな影響が出るかがまだわかっていないので、うつ病を理由に子どもを諦めている人もいます。そこで漢方が使えたらいいんじゃないかなと思いますね。もちろん、「うつ病での子育て」はまた別の問題ではありますが。

体力の回復

東藤:
ちなみに、うつ病から回復していく中で、
こんなことが良かったってありますか?
これを読んでいるうつ病の人に、何かヒントになるようなことって。
吾郎さん:
運動がいいですね。わたしには合っていました。
今でも出来るときはやろうと心がけています。
わたしの場合は、調子を崩すサイクルがパターン化されていて、
根詰めて作業をしていると、まず眠れなくなってくるんですよ。
で、不眠になってしまうと、生活リズムが崩れだして、
ご飯が食べられなくなっちゃう。
朝ごはん抜きで遅めの昼というか、早めの夜というか、
を食べて、一日一食。そしてまた夜眠れず、みたいな。
そうするとどんどん負のスパイラルに入ってくるんですよね。
東藤:
あれ、それ今のぼくですけど(笑)。
吾郎さん:
ほんとですか(笑)。
うつのときってなかなか動くのつらくて、
軽くするだけでもうげってなっちゃうんですけど、
スパイラルを断つために、頑張って動いてみる。
そうすると、体が疲れるじゃないですか。
で、体の疲労感が眠気に変わって、自然に眠りにつけるんです。
そしてなにより、体を動かすと、やっぱり体力がついてくるんですよ。
東藤:
うーん、ほしい!(笑)
吾郎さん:
ほしいですよね。
わたしも回復しかけて10月ぐらいから働き出して、
一番欲しかったのが体力でした。
頭も続かないし、肉体も疲れやすいし。
それを無理にでも体を動かすと、徐々に疲れなくなってきたな、
と感じるようになって。そこからすごくいい方に好転していくんです。

東藤:
うーん。
ちなみにしんどい時期の運動って、どんなことからはじめましたか?
吾郎さん:
最初は散歩でしたね。その延長で、走るようになりました。
東藤:
軽いジョギング。
吾郎さん:
買い物も運動になったと思いますよ。
東藤:
なるほど。
吾郎さん:
重い荷物を持って歩くだけでも、もうぐったりですよね。
東藤:
ぐったりします。
ぼくはこの前、宮益坂を登れなかったのがショックで。
体力をつけたいなと思ってジムに入ったんですけど、軽いジョグ、
しかも走って3分で失神しそうになりました……
ランニングマシンで転げ落ちかけて(笑)。
吾郎さん:
危ないですよ!(笑)。

会社に復職プログラムを交渉してみる

東藤:
復職はスムーズにいきましたか?
吾郎さん:
会社がリハビリさせてくれる時間が長かったんですよ。
復職したのは10月なんですけど、
最初はだいたい月一ぐらいで会社に行って、
とりあえずオフィスで2時間ぐらい過ごす、
ということをやっていました。
それを5月には週2、6月は週3、と徐々に増やしていって。
多分9月ちょっと前は週に5日間、顔を出せていたと思います。
ただ、本格的な仕事はしていない、というステップです。
東藤:
かなりゆっくり時間をかけてくれていますね。
吾郎さん:
はい。ゆっくりと。
東藤:
いいなーそういう制度がある会社はいいなー(笑)。
吾郎さん:
(笑)。
じつはうちも、人を大事にする会社ではあったのですが、
復職の制度はとくになかったんです。
わたしの方から「こういう形で復職していきたいです」と伝えて。
東藤:
人事がそれに対応してくれたと。
吾郎さん:
そうなんですよ。
辞める前も少し調子崩していたのですが、辞めるときも、
「このまま続けてくれてもいいけど、どうする?」と言ってくれて。
ただ自分としては、自分の思うようなパフォーマンスが
できていない状態で、高いお金をもらってやるのもしんどいし、
会社にも迷惑かけたくない気持ちが強かったので
「もう病気なんて全然大丈夫ですよ!」って言える状態になって
また戻ってきますね、と言ってやめたんですよね。
東藤:
なるほどです。
吾郎さん:
会社も、2、3年ぐらいだったら待つから、
いつでも帰って来なよと言ってくれました。
今も月一ぐらいで人事の方と会っています。
東藤:
へぇ~素敵な会社ですね。

NPOのコンサルティングへ

東藤:
NPO支援をされている、と伺っていますが。
吾郎さん:
もともとNPOのコンサルティングをしたいなと思っていた
こともありまして。で、10月末に、たまたま行った
NPO関連のイベントで声かけてもらったのが
今のクライアントさんなんです。

会社では復職した後、自信を失うことが多かったんですね。
前のようには仕事ができないので。
周りは「できてるよ」って言ってもらえても、
自分の中で「できないなー」と思ってしまう。
東藤:
過去の自分を基準にすると、きっとそうなりますよね。
吾郎さん:
一方で、自分が本当にしたかったNPOのコンサルティングは、
しっかりとできたんです。ある意味、うつ病の回復に
さらにプラスの影響があったかなーと思います。
東藤:
「かつての仕事で失っていた自信とか自尊心が、新しい仕事で回復されていく」
ということですよね。
吾郎さん:
そうですね、まさに。
「自分がちゃんと役にたててるんだ」っていうのはありましたね。

生きててください

東藤:
最後に、いまうつ病真っ盛りの人たちになにかメッセージがあれば。
吾郎さん:
そうですね。きっと、ちゃんといつか……抜けられます。

トンネルみたいな感じじゃないですか、うつって。
いつまで続くんだろうこの状態、と思って
どんどん気がふさいで行っちゃう。
でも、ちゃんといつか抜けられる。
今までどおりの自分には戻れないかもしれないけど、
その、しんどくて何もできない状況っていうのは
ちゃんと抜けられるので。
真っ只中にいるときには、それを信じろと言われても
難しいかもしれないですけど、
「生きててください」と言いたいですね。
東藤:
うん。
吾郎さん:
最近自分の、大事な先輩を亡くしたこともあって。
東藤:
そうなのですか。
吾郎さん:
ほんと、死なないでくださいって思いますね。
ただ、押し付けられないなっていう気持ちもあって。
東藤:
うん、押し付けられないですね。
ぼくも、死にたいと思うこと、よくあります。
なんというか、衝動としての希死念慮とは別に、
死んだら楽なんだよねっていう気持ちはいつもあるので。
だから死ぬなとは言えないんだけど、
死なないでくださいって言いたいですね。
吾郎さん:
そう、強制できないんですけどね。
東藤:
うん。とにかく生きてて欲しいなと。
吾郎さん:
そう思いますね。そこですよね。

あと、わたしはうつになって良かったって思っていて。
うつになると、自分の生き方とか、死ぬこととか、
なんで自分は生きてるんだろうっていう根源的なところを
考えると思うんですよ。
自分が本気でつらい状況になったからこそ出てくる
価値観を得られたのは、何よりの宝物だなと思っていて。
人の痛みがよく分かったり、自分なりの生き方の方針を見つけたり。
そういうのすべて、宝物です。
東藤:
それがあって、NPOの支援も実際にはじめようと思った
っていうところがあったということですか。
吾郎さん:
おっしゃる通りですね。
これからちゃんと自分のしたいことやっていかなきゃな
っていうのがあって。
不安もあったけども、せっかくいいチャンスが巡ってきたから
やってみようかと思い、挑戦しました。
東藤:
なるほどですね。
ぼくもうつ病になってからなんですけど、起業……
残りの人生もしかしたらあと数年かもしれないと考えたら、
何かあとの世代に残さなきゃと思って。
体力的にはまだ全然戻ってないですけど、
起業してなんとかやっていますからね。

じゃあ、今日はこんな感じで。とてもいいお話ありがとうございます!

プロフィール

東藤泰宏(とうどう・やすひろ)
1981年生まれ。
IT業界で働くうち、過労のためにうつ病となる。
1年半のうつ病ニート時代を経て「ゆううつ部」(ブログ)を開設。
2011年にスカイライト社主催の「起業チャレンジ2011」で最優秀賞を獲得。
その賞金300万円で起業。仲間を集め、2012年1月にU2plusを公開。
新たな資金調達にも成功したが、まだ絶賛うつ病中。

「みんなでうつの予防&回復をする認知行動療法サイト」U2plus
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・ とうどうTwitterアカウント @toudou_U2plus
・ イラストレーター:ヨシムラマリ Twitter @coromegane
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