ゆううつ部部長のOB訪問 東藤泰宏 イラスト:ヨシムラマリ

第0回 はじめに

 「タンポポ」という映画がある。
 ボロボロのラーメン屋を切り盛りする寡婦を、若かりし山崎努扮するトラック野郎がほのかな恋情とともに手伝い、素晴らしいラーメン屋をつくりあげる物語。
 ライバル店を視察し、厳しい修行を重ね、(たまに山崎努は決闘し)、様々な仲間と巡り会う日々の中、彼らは一度だけデートをする。それまでほとんどラーメンに関する会話しかしていなかった彼らだが、宮本信子が演じる主人公が不意にいう。


「人はね、だれもが自分の階段を持っているの。大切なのは、生きている間に、その階段をどれだけ高く登れるかということなのよ」


 ぼくは会社員として働いていた数年前にうつ病となった。脳みそにセメントを注ぎ込まれたように思考力が低下し、鉛のように体は重くなり、逃げるように会社を辞めた。それまでに描いていた人生から転げ落ちたと思えた。

 それでも、うつ病ニートとして暮らす日々の中、体調がよくなっていくと共に、うっすらとした目標を抱きはじめた。
 これからは社会人として舗装された歩きやすい道路ではなく、獣道を歩こう。どうせ危険な道を歩くのであれば、うつ病という巨大な問題に精一杯のお返しをしてやろう。登り方はなんでもいい。それよりも高さだ。さっそく高校の後輩を巻き込み「ゆううつ部」というブログを開設。ゆううつ部の部長と自称し、フラフラの体をひきずって起業したり仲間を集めたり色々と動きだしたのだけれど、その辺りの詳しい話はいつか語ろう。

 この連載は、うつ病で苦しみ、そこから回復した人たちのインタビュー集だ。
 「こうやれば絶対によくなる」なんて話はなく、ヒントがあるだけ。でも悲しく苦しい日々を送っている時、いつかよくなるという希望があれば、長い道もなんとか歩けると思うのだ。
 うつ病に悩んでいる当事者、その周囲で困っている親しい人たち。みんなに「うつ病になっても回復はできる」「もちろん幸せになることだってできる」と思ってもらえたらうれしい。

 では、みんなが自分の階段をゆっくりとでも高く登ることができるよう祈って、書きはじめよう。

プロフィール

東藤泰宏(とうどう・やすひろ)
1981年生まれ。
IT業界で働くうち、過労のためにうつ病となる。
1年半のうつ病ニート時代を経て「ゆううつ部」(ブログ)を開設。
2011年にスカイライト社主催の「起業チャレンジ2011」で最優秀賞を獲得。
その賞金300万円で起業。仲間を集め、2012年1月にU2plusを公開。
新たな資金調達にも成功したが、まだ絶賛うつ病中。

「みんなでうつの予防&回復をする認知行動療法サイト」U2plus
ゆううつブログ
うつペディア - みんなで作るうつ情報wiki辞典
・ とうどうTwitterアカウント @toudou_U2plus
・ イラストレーター:ヨシムラマリ Twitter @coromegane
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