民王

第十回

― 7 ―

 店の前で乗り込んだタクシーは、外苑東通りを青山方面に向かった。後部座席の隣にいるエリカからは、ほのかなパフュームが薫っている。学生らしい、少し遊び心を感じるシトラス系。薄手のカクテルドレスの胸元は、薄暗い車内でも白く浮きたつばかりだ。
「青山通りの手前の信号を右折してくれる?」
 エリカがいった。道は流れている。運転手が無言でハンドルを右に切り、住宅街を縫うように進みはじめた。
「ここで、止めて」
 エリカがいい、泰山が支払ってタクシーを捨てた。
「ほう。いいマンションに住んでるんだな」
 低層の高級マンションだ。エントランスの壁面に填っている名前から、大手不動産会社が運営している高級マンションだとわかる。
「ここに、ひとりで?」
「ええ、そうよ」
――たまに男が泊まりに来る以外は、だろうなと、泰山は勝手に決めつける。で、今夜はオレが、その男の役目というわけだ。世の中悪いことばかりじゃない。人間万事塞翁が馬ってやつだ・・・いや、ちょっと意味が違うか。とにかく――優雅に歩き出したエリカの後ろ姿を、まるで貴婦人に連れられた飼い犬のように泰山は追ったのであった。
「こっちよ」
 二階のエレベーターホールを降りると内廊下が二手に分かれていた。その右手の最奥のドアの前で立ち止まったエリカは、ハンドバッグから取り出した鍵でドアを開け、泰山を中へ招き入れる。
 豪華な、大理石の玄関ホールだった。家の中はひっそりとして、ふたりの吐息が聞こえるほど静かだ。
 その静寂が泰山の欲望を燃え上がらせ、泰山は、どくどくと全身の血が滾るのを感じた。
 長く途絶え、忘れかけていた回春の疼きというヤツだ。
 若いっていいなあ。しみじみと歓びを噛みしめた泰山の横でエリカは、無造作にパンプスを脱ぎ捨てる。
 玄関のホールからまっすぐ奥へ続く廊下の突き当たりが、リビングになっていた。一人住まいにしては広く、豪華なマンションである。場所柄、一億円は下らないはずだ。
「いい家だね」
「ありがとう。投資用マンションなんだけど、値段が下がったから、不動産市況が回復するまで私が住んでいいことになってるんだ」
 エリカはエルメスのハンドバッグをソファに投げると、にっこりと泰山を振り向いた。
「お好みはブルゴーニュだっけ?」
「忘れた」
 泰山はエリカに近寄ると、両手をその腰に添え、囁いた。「ワインより、君のインナーの銘柄が知りたい。いますぐ」
「残念ね。下着は着てないのよ」
「あ、鼻血が・・・」
 泰山が慌ててポケットからハンカチを取り出した隙に、エリカはその腕をするりと逃れた。
「冗談よ、バカね」
「人が悪いぞ」
 泰山は、近くにあったティッシュを丸めて鼻に突っ込みながらいった。「冗談かどうか、確かめてやるよ、エリカ」
 再び、エリカに迫ろうとしたそのとき――。
「オヤジ流の口説き文句だな、泰山」
 そのひと言がエリカの口から漏れ、華奢な肩に手を伸ばしかけた泰山がはっと凍りついた。
「えっ? いまなんていった?」まじまじとエリカを眺める。
「オヤジだなっていったんだよ、泰山」
「泰山・・・・?」
 その口調はいままでのエリカのそれとは、まるで違っていた。泰山は、本能的に体をひいた。
「だ、誰だ、お前は」
 エリカの目に、今までとはまるで違う感情が浮かび上がっている。まるで泰山の慌てぶりをおもしろがっているかのようだ。
「お前、泰山なんだろ」
 エリカは聞いた。「息子の体と入れ替わった武藤泰山だ。違うか」
「ど、どうして、それを・・・・」
 視界の片隅で人影が動いたのはそのときだった。
 それを見た泰山は、息を呑んだ。
 あの男だ。蔵本の秘書だという、真鍋義人である。いま真鍋は、泰山にじっと視線を注いだまま、ゆっくりと泰山の背後へ回り込んでくる。近くでじっくり見ると、がっしりした屈強な体格の男だ。いかに翔の若い体とはいえ、組み合えば勝ち目はない。
 くそっ。罠だったのか。
 内心舌打ちしたが、もはやすでに遅かった。
「それにしても、なんでエリカ、君がこの男と・・・・仲間か」
 泰山が聞いた。
「仲間というか、私のボディガードとでもいったらいいかな」エリカの答えは、少々意外だった。
「最近のテロリストはVIP並みだな。ボディガードまでつけているのか」
 精一杯の虚勢を張って、泰山は嫌味をいった。
「それはちょいとばかり違うな、泰山」
 泰山。エリカは泰山のことを再び、そう呼んだ。泰山と名前で呼ぶ人間はそう多くはない。古くからの政治家仲間ぐらいのものである。
 いったい何者なんだ、この女――。
 泰山の頭に疑問が浮かんだとき、
「オレが誰かわかるか」
 エリカが聞いた。
「なにっ?」
 泰山は、エリカを凝視した。
「ほら、いつぞや、牡蠣天おごってやったろう。ほら、新富町の路地の加々美屋でさ。オレが新政党を旗揚げする前のことだ。その恩を忘れたか」
「恩だと?」
 なんだ、このせこい話は!
 泰山はあきれた。「あそこの牡蠣天はせいぜい八百円だろ!」
 そう口にした瞬間、はっと口を噤んだ。加々美屋は、老舗のそば屋だが、そこを馴染みにしている政治家は、泰山の知る限りひとりしかいない。
 さらに――さらにだ。政界広しといえども、泰山の知る限り、牡蠣天をおごったぐらいで偉そうな口をきく男はひとりしか存在しないのであった。
「ま、まさかこのせこさは――」
 泰山は両目を見開いて、改めてエリカの美しい顔をまじまじと見た。「く、蔵本! 貴様か!」
 エリカから不敵な嗤いが洩れた。
 それはたしかに、見覚えのある嗤いだった。代表質問で、重箱の隅を楊枝でほじくるようなつまらん質問をいまにも発しようとする蔵本が浮かべる表情である。
「やっとわかったか、泰山!」
 エリカ、いや、蔵本はいった。
「どういうつもりだ!」
 泰山は吠えた。「これは国家に対するテロだぞ、蔵本。ただで済むと思うな」
「なに早とちりしてるんだ、泰山」
 蔵本はふうっと大きなため息をつくと、ふいに嗤いをしぼませ、肩を落とした。「実はな、オレも被害者なんだ」
「お前も? 」
 改めて蔵本を見た泰山は、「もしかして、最近、歯医者にかかったか」、と聞いた。
「歯医者? ああ。お前と同じだよ。渋谷の丸山歯科。エリカもだ。それはオレなりに調べた」
 蔵本の自宅は、泰山と同じ松濤にある。あの辺りに住んでいる政治家は少なくないから、馴染みの歯医者が重なっていてもおかしくはない。
「ご同慶の至りだな」
 泰山は自嘲し、嘆息した。「それで? エリカって誰だ。お前の愛人か」
 こんな美しく若い女を愛人として囲っているのなら、かなり羨ましい話である。
「お前と一緒にするな。エリカは娘だよ。別れた妻とのな。だから名字が違うんだ」
「すると、いま国会で底意地の悪い質問をしているのは――」
 驚いて泰山は聞いた。
「あっちがエリカだ」
「気の毒に」
 泰山はいった。「根性の曲がったオヤジの醜悪な体と入れ替わるなんて。それがテロの尊い犠牲といわずして、なんだ。ただ、お前の方はいい思いをしてそうだがな。ちょっとおさわりしていいか」
 胸に伸ばした泰山の手を、蔵本はぴしゃりと叩いた。「軽々しくさわるな。――おい、真鍋」
 傍らに控えていた秘書を、蔵本は呼んだ。
「そろそろ、客人がここに来る頃だろう。見てこい」
「客人? 誰だ」泰山は聞いた。
「公安の刑事たちさ。踏み込まれてドアを壊されたんじゃかなわんからな」
 さすが警察官僚あがりの蔵本だけあって、その辺りの読みは鋭い。
 その言葉通り、真鍋が玄関に向かうなり、どやどやと足音がして、血相を変えた新田が飛び込んできた。
「全員、動くな! ――先生、怪我はありませんか?」
 携帯許可を得たらしく、拳銃を手に新田が叫んだ。新田の背後には、泰山も見知らぬ男達がふたり続く。その一人は真鍋を羽交い締めにしたままだ。
「いいんだ、新田君。ご苦労さん。その男を放してやってくれ」
 泰山はいった。「こちらは、憲民党の蔵本志郎だ」
「どういうことです、先生」新田が警戒した目をしたまま、聞いた。
「どうやら、我々と同じように子供化したらしい。新田君、事態は我々が思っていた以上に複雑だ」

― 8 ―

「オレはてっきり、政権交代を狙うお前の仕業だと思っていたぞ、蔵本」
 泰山がいった。
「なわけないだろう」
 吐き捨てた蔵本は、脳波が入れ替わった経緯について語り始める。
「丸山歯科に行ったのは、先週の水曜日のことだ。親知らずを抜いたほうがいいといわれてね。同じ頃、別の歯科に行っていたエリカも、その歯科の紹介状をもらって丸山歯科に来院したらしい」
 つまり、ちょうど泰山と翔が入れ替わったのと同時期に、蔵本もまた「子供化」させられたことになる。
「なぜ、丸山歯科が怪しいとわかった」泰山は聞いた。
「昔のツテで、ちょっとな・・・・」
 極秘情報のはずだが、蔵本は知っていた。さすが元警察官僚の親玉だっただけのことはある。蔵本の情報収集網は警察内部にくまなく張り巡らされ、公安に匹敵するといわれる。民政党と袂を分かって結成した新党を短期間に野党第一党に成長させたのも、陰の情報を操る蔵本の力によるところが大きい。
「どうして、オレのことがわかった」
 泰山は聞いた。
「お前の息子が相当のバカだって話はエリカから聞いていたんでな。これはもしやと思ったわけだ。それに引き替え、オレの娘は優秀なんでな、お前のような心配はしなくて済む」
「そらよかったな。いっそ、このままずっとお前の代わりをやってもらったほうがいいんじゃないか。お前も娘のナイスバディを拝めてそのほうがうれしいだろ」
 泰山は嫌味をいった。
「娘の体なんて見て喜ぶ親がいたら、そいつは変態だな。まあ、オレが娘をやっている限り、余計な虫がつかなくて済む程度のことさ」
 蔵本はいった。「それより、胸が重たくてな。肩が凝ってかなわんよ」
 そういって蔵本が肩を回してみせるとカクテルドレスの胸が揺れ、泰山の視線を釘付けにした。
「く、蔵本、お前の脳波とオレの脳波を交換するっていうのはどうだ」
「お前は猿とでも交換してろ」
 蔵本は侮蔑の視線とともに一蹴し、「それより、泰山。この事件についてどこまで情報をつかんでる。お互いに情報を共有して、ここはひとつ共同戦線といかないか」、と話を元に戻す。
「よかろう。秘密会議だ」
 エリカのマンションを出たふたりは、新田を伴って防衛省地下の会議室へと場所を変えた。閣議を終えた翔と狩屋もすでに来ている。
「なんで、エリカがここにいるんだよ、オヤジ。どういうこった」
 入室してきた蔵本と泰山をみて、素っ頓狂な声を上げたのは翔であった。「こいつはエリカじゃない。蔵本志郎だ」
「はあ? あのクソオヤジか。オレにくだらねえ質問をよこしやがった」
「その質問をしていたのが、エリカさんなんだそうです」
 すでに事情を説明された貝原がいった。「随分、君とは学力が違うようで」
「嫌な女だ」
 そういいつつ翔は、狩屋とともにカクテルドレスのエリカをまじまじと眺めた。
「それにしても、あのゴキブリみたいな蔵本とは似ても似つかないなあ。泰さん、どう思います」と狩屋。
「正直、ちょっとうらやましい」と泰山。
「誰がゴキブリだ。オレがゴキブリなら、お前はシロアリかなんかだろう」
 元民政党議員ということもあって、蔵本も狩屋とは元来、親しい。その口ぶりに、「あ、たしかに蔵本だな」、と狩屋は納得した。「それにしても、女装が趣味だったのか・・・・」
「違うだろ。これが女装に見えるか、カリヤン」
 蔵本がむっとしていった。「頭だけじゃなくて目も悪くなったらしいな」
 そのとき、
「それで、どうだったカリヤン、本日の首尾は」、と泰山が聞いた。
「漢字は読めました。な、翔ちゃん」と狩屋。デキの悪い小学生と家庭教師のような会話である。
「そういうレベルかよ」泰山は落胆した。
「まさか子供の学力が世論を左右するとはな。いまや憲民党の支持率は右肩上がりの一本道よ」
 蔵本が皮肉な笑いを浮かべ、余裕をかました。
「そんなものあっという間に逆転ですよ、ねえ、先生」こと支持率のことになるとムキになる貝原がいった。
「おもしろいじゃないか。次の選挙が楽しみだな、泰山。早く解散しろ」
「慌てなくても、そうしてやるさ。そのときまでにお前のせこさを悟られないように、気を付けるんだな、牡蠣天」
「それはともかく、このままではおふたりとも選挙を戦うことはできないでしょう」
 脱線しかかった話し合いを本線に引き戻した真田は、CIAからの極秘情報を蔵本に提供した。
「CIAから最先端技術が盗まれたという話は、私も入手していた」
 全てを聞き終えた蔵本はいった。「問題は、その技術を盗んだテロリストだ。君らの推測は?」
「目下、情報収集に全力を挙げていますが、新たな情報はありません」
「やっぱり、アルカイダの仕業じゃないですかね」
 貝原がいった。「もしかしたら、日本だけじゃになく、西側諸国全体の首脳が子供化している可能性もありますよ。もしそうなら、目に見えなくても9.11並みのテロですよ、これは」
「西側諸国から、同様の連絡はないのか」泰山が聞いた。
「ありません。実際に、同様のテロが起きている可能性はあるでしょうが、それを明かす国があるとも思えません。国家防衛上の最高機密の扱いでしょうから」
「それにしても、腑に落ちないなあ」
 狩屋が首を傾げた。「泰さんや鶴さんら閣僚が狙われるのはわかるとして、蔵本までターゲットにしたのはなんでだろう」
「それは、ウチが次の与党になると思ったからだろう」蔵本は胸を張った。
「それはないと思いますよ、蔵本先生」
 闘争心露わに貝原がいった。「先日まで支持率では民政党が上回っていたんですから、その段階でテロリストが憲民党なんか狙うはずはありません」
「なんかとはなんだ、なんかとは」蔵本がむっとした。
「お前が掲げたマニフェストの中に、テロリストの逆鱗に触れるなにかが含まれていたとか」
 泰山の指摘に、蔵本は腕組をして考えたが、「そんなものがあるとは思えんな」、と首を横に振った。
「みなさん、もう少し柔軟な発想になったほうがいいんじゃないですか」
 新田の指摘に全員が振り向いた。「イスラム原理主義だけが容疑者とは限りません。いま犯人像を特定するのは、得策とは思えませんね」
 派手ななりの公安刑事は、このときばかりは敏腕刑事を彷彿とさせる鋭い眼差しになる。新田は続けた。
「犯人には、犯行に及ぶだけの動機がなければならない。その動機が、宗教上の理由によるものか、国家的な主義信条によるものなのか、あるいはそれ以外のものなのかは、この犯罪の全容を解明することでしか解決することはできません」
 至極全うな意見に、しばしの沈黙が落ちた。
「なにを呑気なことをいってるんだ、公安は」
 それを破ったのは、激しやすい蔵本である。「現職の総理大臣や閣僚、それに野党第一党の党首がテロに遭っているというのに、そんな悠長なことをいっていていいのか。容疑者がいるのなら、いますぐ全員逮捕して、拷問してでも真相を吐かせるのがお前らの仕事だろう」
「生憎、公安は、秘密警察ではありませんので」
 新田は、軽蔑しきった口調でいった。「それと、先ほどうちに入ってきた情報ですが、憲民党の議員が六本木の高級売春クラブの顧客だったことがわかったそうです」
「嘘だろ。誰だ」蔵本が、はっとして聞いた。
「浜畑健三郎」
 蔵本の顔から感情が抜け落ちた。瞬きすら忘れ、言葉を発するのだが、唇だけがひくひくと動いているだけだ。
「は、浜畑が・・・・」
 浜畑は蔵本と並ぶ、憲民党の顔である。若手議員として、テレビや雑誌に引っ張りだこのイケメン議員としても知られている男であった。
 新田は続けた。
「先ほどその売春クラブが摘発され、押収した顧客名簿の中に浜畑議員の名前があったそうです」
「なんということだ! 女に不自由しているのなら、オレに相談してくれたらよかったのに」
「そういう反省かよ」と涼しい顔で狩屋。
「くそっ。こうしてはおれん。オレは先に失礼させてもらう」
 立ち上がった蔵本は秘書を振り返った。「真鍋、行くぞ。党本部だ!」
「やれやれ。敵の不幸は蜜の味だな」泰山が打って変わって余裕でいった。
「支持率云々と自慢するからですよ」と貝原も容赦ない。
「これで次期選挙で民政党も安泰ってわけですね、泰さん」
 狩屋がいったとき、「そうですかね」、というひと言を、新田が口にした。
「なんだ、新田君。まだあるのか」
「これもさっき入った情報なんですが、民政党大物議員の愛人だったと名乗る女が、「週刊潮流」に実名でインタヴューに出るそうです」
「う、う、嘘だろ?」
 泰山が泡を食った顔になった。「だ、誰だっ?」
「まさか、泰さん――」
 狩屋が、おそるおそる、聞いた。「美香じゃないですか。この前、口止め料けちったでしょう」
「払ったぞ、百万円。少なかったか――!」
 泰山が頭を抱えたとき、「銀座のルビーという店にいる、菜々美って子だそうで」、と新田。
 その瞬間、奇声を上げたのは、泰山ではなく狩屋のほうだった。
「ど、どうした、狩屋のオヤジ」
 わけがわからない翔に、「菜々美っていうのは、狩屋官房長官の女だったんですよ」と、貝原が耳打ちする。「ちょっとぽちゃっとしてて色白の、三十路の女です。他に馴染みが出来たんで乗り換えたんです」
「狩屋のオヤジも隅におけないなあ」翔がにやにやしながらからかった。
「呑気なこといってる場合じゃないですよ、翔ちゃん!」
 狩屋はムンクの叫びのような顔で泰山を振り向いた。「ど、どうしよう、泰さん」
「それを考えるのが官房長官の仕事じゃないか、カリヤン」
 いつもながら考えるのを放棄して泰山がいった。
「そ、そんな――!」
 いまにも泣き出しそうな顔で、狩屋は頭を抱えた。

 

【編集部より】
『民王』の連載は第十回で終了とさせていただきます。残る最終章を書き下ろしの上、三月上旬に単行本を発売させていただく予定です。泰山、翔の運命やいかに……!? 続きは単行本でお楽しみください!

 

プロフィール

池井戸潤(いけいど じゅん)
63年岐阜県生。慶應義塾大学卒。
『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞。
主な作品に、『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『シャイロックの子供たち』(以上文藝春秋)、『銀行総務特命』『銀行狐』『BT’63』 『不祥事』(以上講談社)、『空飛ぶタイヤ』(実業之日本社=WOWOWドラマW『空飛ぶタイヤ』原作)、『最終退行』(小学館)、『金融探偵』(徳間書店)などがある。
最新刊『鉄の骨』(講談社)が絶賛発売中です。

池井戸潤さんのホームページはこちら:http://www.ikeido.com/
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