illustration:五十嵐大介


『海獣の子供』と木地雅映子の小説には大きな共通点がある。
それは「普通」ではない、規格外の少年少女たちの物語であることだ。
人間が小ざかしい知恵をもってしてここ数十年で作り出した社会や空気に
背を向けて、世界の本質に真摯に向き合いたい――。ふたりの作品には
そんな願いが共有されているように思える。
宇野常寛(評論家/上巻解説より)
木地雅映子は帰ってきた。ただ生き延びただけでなく、
『悦楽の園』という新作と共に。その本を手に取った私は
ひどく緊張してしまった。読むのが怖いような気持ちだった。
大丈夫か。世界と「普通」に和解してないだろうな。
結論から云うと、『悦楽の園』は傑作だった。
『氷の海のガレオン』において哲学的な命題にも見えた
主人公の苦しみを、より現実的な問題として捉え直すことで、
前人未踏の「次のステップ」を踏み出せたのだと思う。
穂村 弘(歌人/下巻解説より)


 
 
 

なんで、生きづらいんだろう。


僕には、君がいればいい。


『悦楽の園〈上・下〉』
2010年5月7日発売
ポプラ文庫ピュアフル
定価:各本体560円(税別)
装画:五十嵐大介

 

 

革命家だったとも言われる父と、当時15歳の母とが「妥協」せずに生まれた娘・相原真琴、13歳。妥協に背を向け、クラス内で特殊な立ち位置の優等生へと育った彼女は、ある日、迫害されている同級生・南一に出逢う。彼の描く絵は、周囲には理解できない特殊なものだった――。



 
  相原真琴 Aihara Makoto
真琴を産んだ直後に母が15歳で死亡したあと、曾祖母、祖母、児童相談所で福祉司をしている伯母、国立大学で経済学を学ぶ伯母らに囲まれて育つ。合気道の達人である曾祖母に鍛えられつつ、中学校の中では、特殊な立ち位置の優等生としての地位を確立している。
  南一 Minami Hajime
あだ名は、ナンイチが転じてナンチ。クラス一のチビで軟弱、成績ははてしなく最下位に近い。行動が突飛なためか友達はおらず、派手めの男子たちから小突き回されている。この世のものとは思えない不思議な絵を描く。
  染谷 Someya
通称ソメっち。茶髪にピアスに細い眉のヤンキー系で、不良男子が固まるバレーボール部に所属。快活な性格のうえ、不良グループの中心人物「染谷先輩」を兄に持つことから、スクールカーストでは上位に位置するが……。



 

1971年生まれ。日本大学芸術学部演劇学科卒業。93年「氷の海のガレオン」が第36回群像新人文学賞優秀作となり、作家デビュー。94年、同作のほかに2編を収録した単行本『氷の海のガレオン』を刊行。「氷の海のガレオン」は、熱狂的ファンの間で長らく伝説の存在となっていたが、2006年11月に書き下ろし「オルタ」を加えてピュアフル文庫より刊行され、『この文庫がすごい! 2007年版』などで話題となる。
2007年10月、初の長編となる単行本『悦楽の園』を上梓。『朝日新聞』『読売新聞』『文藝春秋』『an・an』『活字倶楽部』で紹介されるなど、注目を集める。
他著に『氷の海のガレオン/オルタ』『マイナークラブハウス』シリーズ(ともにポプラ文庫ピュアフル)がある。

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