Number1:スターダスト・レビュー

 世の中に溢れるたくさんのJ-POP。そのなかでも、長く愛され続けているアーティストに焦点を当て、その音楽の成熟味や豊穣感をあらためて味わってみようというテーマのもと、このコラムをスタートさせることになった。ワインセラーのごとく美味しい音楽の貯蔵庫のようなコラムになれば……タイトルにはそんな想いが込めてある。

 まずは、今年デビュー25年目に突入したスターダスト・レビューについて語りたい。私のスタ・レビ初体験は'84年。当時、私が通っていた大学が主催する彼らのライブを、彼らの大ファンの友人に誘われて観に行った。その日は全自由席。開場時に猛ダッシュした友人が最前列ド真ん中の席を確保してくれたけれど、私自身、そんな席で観るのは気がひけた。なぜなら、"♪遠い〜昔のことさ〜"と歌われる『夢伝説』という曲で彼らが少しずつ世の中で注目されだした頃だったのだが、私にとってはノーマークなバンドだったからだ。しかし、その日で一気に目覚めてしまった。「なんて楽しいライブをやる人たちなのだろう!!」──後日、やはりライブを観ていた他の学友たちとも「良かったよネ」と学食でスタ・レビ話に花を咲かせていたのを憶えている。もう20年以上も前の、それこそ"♪遠い〜昔のことさ〜"である。バンドは解散するケースが少なくない。だから、普通、それだけ年月が経つと「そういうバンド、いたよね」とシミジミしてしまうものだが、スタ・レビは一時休止することもなく、今なお精力的に活動しているのだから嬉しくなる。
 彼らは毎年、コンスタントにロングツアーを敢行している。最近も約7ケ月をかけて全73公演をやり遂げた。筋金入りのライブ・バンド。まだまだ元気な40代だ。
 彼らは多数の名曲を持っている。そこそこのヒット・シングルもいくつかある。しかしながら、ヒットチャートを賑わすバンドだとは言えない(彼らの場合のみならず、いくら名曲でも世間で言うところのヒット曲になるとは限らないという現実は残念に思う)。水戸黄門の紋所入りの印籠のような切り札となる大ブレイク曲はなくても、彼らは確実な集客力を長いこと維持している。CDセールスが重視されがちな世の中において、それはめずらしいというか、スゴイことである。彼らの場合、ライブそのものが印籠なのだ。
 以前、知人に「スタ・レビのライブだと、ずっと座って聴いていられるんでしょ?」と訊かれて私は少し驚いたのだが、"バラードのグループ"というイメージを抱いている人も世間には結構いるらしい。最近、ウィスキーのCMで流れた『木蘭の涙』をはじめ、心に沁みるバラードも彼らは確かにいろいろと聴かせてくれる。でも、多様なジャンルの要素を取り込んだ幅広い音楽性が彼らの特徴だ。心も体もウキウキと躍らせてくれる曲もたくさんあるし、骨太なロック・スピリットを堪能させるパワフルな曲だって数多い。
 根本要のボーカルは魅力的だ。独特の味わいがあるぶん、"上手い"というより"旨い"という表現が似合う気がする。それに、経験豊富な彼らが織りなすバンド・サウンドの演奏スキルは言うまでもなく高い。"年輪"を感じさせる彼らのア・カペラも逸品だ。まさに、"継続は力なり"であるし、"継続"は彼らの音楽の"深み"にも繋がっている。
 さらに、彼らは"観客を心から楽しませること"にかけても非常にプロフェッショナルな姿勢を見せており、エンターテインメント性も大事にしつつ、毎回、聴く側の喜びのツボを押さえるような内容のステージを繰り広げる。そして、彼ら自身が音楽の楽しさを全力で体現し、その波動でその場に居る人たちをごく自然に巻き込んでいく。その空間に身を置くたびに、私は彼らの誘引力の強さを実感せずにはいられない。あと、ボーカル・根本の芸人ばりの軽快なトークも絶賛したいほど(!?)オモシロイということも付け加えておく。
 彼らにはもう何回も取材をさせてもらっている。インタビューはいつも明るくなごやかな雰囲気でおこなわれるが、彼らの話からはライブ・バンドであることの自負や、まだまだ向上していきたいという意欲をうかがうことができる。普段は謙虚な人たちだけど、音楽に対する心は熱い。20周年を迎えた年には、朝から夜までの10時間で100曲を演奏するという大胆なイベントもやってのけた。とてもチャレンジャーなバンドなのだ。
 現時点で彼らの通算ライブ本数は1700本を超えているらしい。1000本記念ライブは'96年12月の終わり頃だった。当時、「2000本もあり得るのか?」という話をしていたが、このまま行けば、それもさほど遠い未来のことではないだろう。当然、彼らは記録更新を目標にライブをやっているわけではない。が、そういう数字は彼らの存在の重みを示すものになるし、彼らがいかにスタ・レビらしさを貫き続けているかという大事な証にもなる。
 先々のことはわからない。でも、いつか2000本に達したときには、1000本のときのように、「これも一つの通過点」と笑顔で話す彼らでいてほしい。

 

松野ひと実(まつのひとみ)
神奈川県横浜市出身。88年、明治学院大学法学部法律学科卒業と同時にフリーランスの音楽ライターとして取材・執筆活動を開始。様々なJ‐POPアーティストの記事を手がけている。04年には『槇原敬之の本。』(幻冬舎)を出版した。


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