【Story】
芝二郎、35歳。二郎だけど一人息子で長男。無職。生れ育った小さな町から一歩も外に出ずに実家でぬくぬくと暮らしてきた。しかし父が突然他界し、母が家出。芝家はどうなるのだろうと親戚一同が不安に包まれていた。そんなある日、買い物に出かけた二郎は赤いスカーフを首にまいたマメシバの子犬に遭遇する。子犬の名前は一郎。母が自分を探させるためによこした子犬だった――。
6月13日(土)より、渋谷シアターTSUTAYA他 全国ロードショー


(C)2009「幼獣マメシバ」製作委員会
【キャスト&スタッフ】
原案・脚本:永森裕二
監督:亀井亨
出演:佐藤二朗、安達祐実、渡辺哲、笹野高史、藤田弓子ほか
芝二郎、35歳。二郎だけど一人息子で長男。無職。生れ育った小さな町から一歩も外に出ずに実家でぬくぬくと暮らしてきた。しかし父が突然他界し、母が家出。芝家はどうなるのだろうと親戚一同が不安に包まれていた。そんなある日、買い物に出かけた二郎は赤いスカーフを首にまいたマメシバの子犬に遭遇する。子犬の名前は一郎。母が自分を探させるためによこした子犬だった――。
6月13日(土)より、渋谷シアターTSUTAYA他 全国ロードショー

私は今まで動物を飼ったことがない。そうした時に大概耳にする「動物嫌いなんですか?」という言葉。「そんなことはないんですけどね」と大人の女性らしくクールに答えてみるが、本当は外で可愛い犬にでも出会おうものなら心の中で「ひゃ~、きゃわいい~」と叫び、その歩く姿に「とてちて、とてちて」と擬音語をつけてしまう自分がいる。そんな私の胸がきゅんきゅん鳴りっぱなしだった映画が、この『幼獣マメシバ』なのである。
引きこもりだった中年男が母親から与えられたミッションをクリアすべく旅に出る。引きこもりという言葉はここ数年いたるところで耳にするが、その要因を暴き、克服する感動の人間再生ドラマというのはいささか見飽きた感がある。この映画は、その重たさや陰りというものがない。非常に心地良く、そして何よりも笑いっぱなしなのである。観客をひたすら笑わせてくれるのは主人公の二郎を演じる佐藤二郎さん。私も数年前に共演させていただいたことがあるのだが、思わず本番中にも吹き出しそうになってしまった。しかしその裏にはその場面をいかに魅力的にするかを考えている佐藤さんがいて、役者として尊敬すべき人なのである。佐藤さんが考え、演じた中年のニート。やたらと口が達者で、ひどく卑屈な物の考えをする。そして他人を受けつけない。言葉にすると嫌な人間にしか思えないのだが、佐藤さんが演じるとどこか憎めない。観客はいつの間にか、そんな主人公を応援しているのだ。もしこれが中年ではなく、青年だったら?と考えた。映画は成立しなかっただろう。笑えることは一緒だったかもしれないけれど、そこに切なさは生まれなかっただろうと思う。中年と子犬がとぼとぼと歩く姿は笑ってしまうのだが、やたらと切ない。犬は飼い主の心がわかると言う。でも、私はマメシバが二郎の気持ちがまったくわかっていないように見えた。だからこそ、二郎はマメシバを受け入れたのだろうと。無垢であることは、時折ひょんなところで奇跡を起こす。30歳を過ぎて思うことではないが、きょとんと二郎を見つめるマメシバを見て無垢でいたいと願ってしまった。誰かを救いたいなんて、おこがましい思いからじゃないけれど。
そしてこの映画、笑える中にぎょっとするほど胸をつかれる台詞が出てくる。ネタバレになってしまうから詳しくは書けないけれど一つだけ。
『休憩って慣れちゃうんですよ』
二郎が言われた言葉である。仕事が辛い、人間関係に疲れた、大人になると誰もが抱えるそんな悩み。私は何かと理由をつけて自分を休憩させることが多かった。それは休憩じゃなくて、ただ単に逃げているだけ。一度、休憩するとなかなか立ち上がれなくて、どんどんどつぼにはまってしまう。それで引きこもりになったわけではないけれど、やっぱり自分には休憩が多すぎたと反省してしまった。疲れることなんてたくさんあるけれど、そこで休憩をするんじゃなくて、ゆっくりでも前に進むことが人間として大切なことなのだと痛感した。106分の上映時間、二郎の旅に客席からお供させてもらい笑いっぱなしな上に、そんな大切なことに気づかされた素敵な映画でした。

1978年、東京都生まれ。1995年、フジテレビ系ドラマ『じんべえ』で女優デビュー。以後、映画、ドラマ、CM、舞台等で幅広く活躍中。
著作に『色鉛筆専門店』(アクセスパブリッシング)、『しょーとほーぷ』(マガジンハウス)がある。
公式サイト:
http://www.flamme.co.jp/MayukoNishiyama/flm_profmn.html