映画見聞録

映画をこよなく愛する人々が各界より集い、巷で話題の作品から通好みの渋い作品まで、独自の視点で書き綴る「偏愛的新作映画紹介」コーナー。日本を「黄金の国ジパング」としてヨーロッパにはじめて紹介したマルコ・ポーロのように、新作映画のまばゆい輝きをみなさんにお届けします!

【Story】

織田信長(中村橋之助)を暗殺した明智光秀が討伐され、豊臣秀吉(奥田瑛二)が天下を取った時代。超人的な身体能力を武器に金持ちから金品を盗み、貧しき者に分け与える盗賊・石川五右衛門(江口洋介)がすい星のごとく現れ、庶民を熱狂させる。そんな中、五右衛門は盗み出した財宝の中に重大な秘密が隠されている南蛮製の箱を見つけるが……。

5月より、丸の内ピカデリー1ほかで全国ロードショー

 

Review

西山繭子

  先日まで役者の仕事で時代劇をやっていたのだが、時代劇の場合常に頭を悩ますのは時代考証というものだ。「江戸時代にこの言葉はなかった」「こういう所作はなかった」平成の時代を生きている私達が数百年前の時空間を忠実に再現するというのは、容易ではない。いや不可能だ。しかし、多くの場合そこにある『時代劇のルール』というもの守らなくてはいけない。ルールを破ることは時に勇気を要する。その勇気を持ってルールを奇抜に壊してくれたのが、この映画「GOEMON」である。
 外国人がこの映画を見たら時代劇だと思うのだろうか。ちょんまげをしている者などは見当たらず、着物も近未来的でスタイリッシュ。私はSF映画だと思った。冒頭などは「スター・ウォーズ」を見ている雰囲気だった。紀里谷監督が「CASSHERN」でも見せてくれた物凄い迫力のCGがこれでもかというほどに散りばめられている。しかし私がCGの技術に感動することはまずない。これは否定ではなく、ただ単に私のCGに対しての知識がゼロだから、その素晴らしさがわからないということだ。根っからのアナログ人間の私、もしこの映画がCGだけで人を唸らせてやろうというものだったら、ここで紹介するはずもない。何よりも軸にある物語に私は思わず唸ってしまった。
 学生時代、私は歴史の授業中、常に一つの疑問を抱えながら先生の話を聞いていた。先生が熱弁している偉人の人物像、教科書に書かれた逸話、これは全て嘘なのではないだろうかと。歴史上で有名な人間は数多くいる。もちろん誰も実際に話したわけでも会ったこともないのにその人物が後世まで語り継がれるというのは不思議なものだ。語り継がれるほどに、その人物像はデフォルメされて謎が深まっていく。全てが嘘になっている可能性だって否定できない。しかし例えそれが嘘であっても石川五右衛門がこの映画を見たら絶対にニヤリとするだろう。江口洋介さん演じる五右衛門の格好良さと言ったら、そりゃ素晴らしい。若手のイケメン俳優じゃ演じられなかっただろう色気と男気のある五右衛門像。ちなみに昨年観劇した劇団新感線の「五右衛門ロック」には江口さんも出演していたが、五右衛門を演じていたのは古田新太さんだった。もちろん五右衛門じゃなくても格好良かった。ミーハー的感想はこの辺でよしとして、軸となる物語である。五右衛門が生きた時代は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康という名だたる偉人が天下統一という野望を胸に抱いた戦いの時代である。彼らをそれぞれ主役に描かれた作品はいくつも存在する。それらの作品はとかくヒーロー視されることが多い。私は人間が血を流してでも天下統一を夢見る人間がヒーローだなんて思わない。この映画は私のそんな気持ちを納得させてくれる構成になっていた。人間の弱さ、愚かさが戦いを生む。五右衛門はそれにどうにか歯止めをかけたいと一人突き進んで行ったのだ。
 混沌とした今の世の中で私達は心の拠りどころとしてヒーローの出現を望んでいるところがある。しかしそんな容易く現れてくれるはずもない。だからこそ、映画という娯楽の中で思いを馳せることで少し救われるのだろう。

プロフィール

西山繭子(にしやままゆこ)

1978年、東京都生まれ。1995年、フジテレビ系ドラマ『じんべえ』で女優デビュー。以後、映画、ドラマ、CM、舞台等で幅広く活躍中。
著作に『色鉛筆専門店』(アクセスパブリッシング)、『しょーとほーぷ』(マガジンハウス)がある。
公式サイト:
http://www.flamme.co.jp/MayukoNishiyama/flm_profmn.html

 

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