映画見聞録

映画をこよなく愛する人々が各界より集い、巷で話題の作品から通好みの渋い作品まで、独自の視点で書き綴る「偏愛的新作映画紹介」コーナー。日本を「黄金の国ジパング」としてヨーロッパにはじめて紹介したマルコ・ポーロのように、新作映画のまばゆい輝きをみなさんにお届けします!

【Story】

 文武両道の誉れが高い米・ルーズベルト高校の女子バスケットボール部「ラフライダーズ」に7年もの間長期密着し、彼女たちが州チャンピオンに登りつめるまでを追ったスポーツ・ドキュメンタリー。

12月20日(土)より、渋谷シアターTSUTAYAにてモーニング&レイトショー

 

 

Review

西山繭子

  私は自他ともに認めるぐーたら人間。その私が今までこれだけは頑張ったと胸をはって言えるもの。それは中学高校と6年間、汗と涙にまみれながら続けた部活動。
 大袈裟ではなく今まで観たドキュメンタリー映画の中で一番面白かった。自分の青春時代と重ね合わせるところが多かったからかもしれない。「女バス」(ちなみに“じょばす”と読みます)というタイトルだけでは、何ともいやらしい想像をしてしまった私なのですが、98分の上映時間中、いつの間にか昔の純粋無垢な私に戻れた気がした。
 物語はワシントン州にあるルーズベルト高校女子バスケットチームの7年間を追ったドキュメンタリー。駄目なチームを敏腕コーチが成長させていくサクセス・ストーリーなど今まで何本も観ているが、やはりドキュメンタリーには説得力がある。そこにいる人間達の闘う素顔にはどんな名優でも敵わない。
 私がやっていたのはバトントワリングという競技だった。あまりにマイナーな競技のために「ああ、棒をクルクル回すやつでしょ」と言われてしまうが実際は物凄くハードなスポーツ。新体操みたいな感じです。朝練、昼練、夜練が毎日続き、夏休みなんて地獄だった。上下関係も厳しくて当時、世の中で一番怖いものは先輩だった。そんな環境があったからこそ毎年のように全国大会に名を連ねる強豪校だったわけなのだが、きつかった。名誉を勝ち取るためにはそれなりの代価を払わなければいけない。それは女子高生という箸が転がってもおかしい時期にひたすら体育館で過ごした時間。この映画の面白いところは、体育館の中だけではなく彼女達の日常をも切り取っている点。そこには人種の問題や貧富の差など社会全体の問題が浮き彫りになって現れている。同じ目標に向かう一つのチームと言っても、そこは千差万別の人間の集まりである。しかも高校生という多感な女の子達。ぶつからないはずがない。コーチはそこでインナー・サークルという制度を取り入れる。それは生徒達だけで話し合いの場をもうけるというものだった。私もそんな風に話し合った経験があるが、たぶんみんな腹のうちの半分も吐き出せなかった気がする。安易な考えだけどアメリカ人の場合は違うのだろうなと思った。実際、コーチは怒鳴り声が響いていたと言っていた。
 バスケットには明白な勝ち負けがある。大人は「結果じゃない、過程が大事なんだ」と言うけれど、その時を生きている彼女達にとってはやはり結果が全てなのだ。過程が大事だと気づくのは何年も経ってからのことだろう。ロッカールームで涙を流す彼女達を見て私も一緒に悔し涙を流した。試合の映像が流れる中、いつの間にか両手を握りしめて祈っている自分がいた。映画を観ていた人達がみな同じ気持ちだったと思う。上映が終わって席を立つ人々の表情がすごく幸せそうに見える映画などなかなか出会えないものだ。青春時代に何かに励んでいた人もそうでない人も絶対に満足できる映画だと思う。
 試写会場を出て携帯のメールを受信するとバトントワリング部の子、数名からメールが入っていた。メンバーの一人のお父様が亡くなられたという悲報だった。チームを離れてから13年が経った。頻繁に会うこともない。しかし一つの目標に向かって行った絆はずっと続いている。公開が近づいたら「女バス、見た方が良いよ」とメールを送ろう。

プロフィール

西山繭子(にしやままゆこ)

1978年、東京都生まれ。1995年、フジテレビ系ドラマ『じんべえ』で女優デビュー。以後、映画、ドラマ、CM、舞台等で幅広く活躍中。
著作に『色鉛筆専門店』(アクセスパブリッシング)、『しょーとほーぷ』(マガジンハウス)がある。
公式サイト:
http://www.flamme.co.jp/MayukoNishiyama/flm_profmn.html

 

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