映画見聞録

映画をこよなく愛する人々が各界より集い、巷で話題の作品から通好みの渋い作品まで、独自の視点で書き綴る「偏愛的新作映画紹介」コーナー。日本を「黄金の国ジパング」としてヨーロッパにはじめて紹介したマルコ・ポーロのように、新作映画のまばゆい輝きをみなさんにお届けします!

【Story】

 二枚目俳優の草刈正雄(草刈正雄)は押しも押されぬ大スター。だがそれは世間をあざむく表の顔。真の正体は女王陛下の元で働く諜報部員、その名もコードナンバーモ0093モだった!木を隠すなら森の中。敢えてマスコミに素顔をさらすことで、スパイである身分を隠すために始めた芸能活動だったが、意外にも天性の才能を発揮し、草刈自身も自分がスパイである事実を忘れかけていたある日、20年ぶりに女王様からの指令が下る……。

Review

西山繭子

 まずは是非とも、この映画の公式HPにアクセスして欲しい。トップページの草刈正雄さん。銃を構え、いささか困り顔にも見える。冷静に見れば普通に格好良いのである。二枚目俳優なのだから。しかし、実際は超ウケるのである。私は、内容を読む前にこの写真だけでお腹いっぱいになりかけてしまった。そして映画を観終わって、私のお腹は限界を越えていっぱいいっぱいだった。

 この映画で草刈正雄さんは草刈正雄役である。本人役というのは映画でもよくあることだが、この映画に関してはちょっと違う。あくまでも映画の中の草刈正雄を演じている。草刈正雄が実はスパイであるという壮大な物語なのだ。もし、草刈さんが本当にスパイならば話は別だけど。草刈さん以外にも、この映画は本人役で水野晴郎さん、お天気キャスターの森田正光さんが出演しているが、登場の仕方がいつも通りなのに面白い。

 こういったパロディ映画というのは邦画でもいくつかはあるが、ここまで人を笑わせることに徹底した映画は観たことがない。最終絶叫計画とかオースティン・パワーズみたいな感じなのだが、洋画だと日本人が観ても笑いの壷が理解できない時がある。その点、この映画は日本人の心を鷲掴みにする邦画の中の邦画とも言えるのではないだろうか。だって、外国人が水野晴郎さんを観ても何の面白さもわからないだろう。もちろんストーリーはきちんと軸としてあるのだが、やはりこの映画は随所随所に出てくる「大笑いネタ」と「ちょい笑いネタ」を楽しむ映画だと思う。はっきり言って、相当しつこい。それが、そのうちしつこさを通り過ぎて、物足りなさまで感じてしまうのは不思議である。

 この映画は草刈さん以外では絶対に成立しなかったと思う。草刈さんと言えば、世間的に間違いなく二枚目なのだが、私の中ではすでに「おもしろい」位置に格付けされている。数年前に「ケータイ刑事」というドラマでご一緒させていただいたことがある。その映画も素敵なコメディだった。バーボン刑事こと草刈さんのコミカルな芝居に本番中に吹き出しそうになった。というか、草刈さんご本人さえも一瞬素に戻って笑っていた。芝居の中で、挨拶がてら手の甲にキスをされたが、メロメロになるどころか爆笑しそうだった。「こんなに二枚目なのに、このおもしろオーラは何なのだ!?」と思った。二枚目の人がコメディをやったりすると、自虐的で痛々しく見える時がある。草刈さんには、それがまったくない。未熟者の私が言うのもおこがましいが、素敵な歳の取り方をしていらっしゃるのだなと思う。ああ、この映画を観てどうやら私は草刈正雄さんに夢中になってしまったようだ。でも、この映画を観た人は絶対に大好きになると思う。

 少しずつ寒くなって外にいるのが億劫になった人は、ちょいと映画館に足を運んで観て下さい。絶対に笑えます!

 それと、オープニングとエンディングに使われていた草刈正雄のテーマ曲、CD化して欲しいな。。

プロフィール

西山繭子画像
西山繭子(にしやままゆこ)
1978年、東京都生まれ。1995年、フジテレビ系ドラマ『じんべえ』で女優デビュー。以後、映画、ドラマ、CM、舞台等で幅広く活躍中。
著作に『色鉛筆専門店』(アクセスパブリッシング)、『しょーとほーぷ』(マガジンハウス)がある。
公式サイト:
http://www.flamme.co.jp/MayukoNishiyama/flm_profmn.html
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