【Story】
太郎(神木隆之介)は野球好きの父(石黒賢)の影響で野球選手を目指し、庭で素振りするのが毎晩の日課。練習のお供はラジオから聞こえる野球の実況中継や、リクエスト番組だった。ところが、突然学校で倒れることが続き、母(西田尚美)に連れられて、叔母のかなえ(村川絵梨)が勤める海辺の病院へ向かう。アメリカ帰りの通称“若先生”(佐藤重幸)と太郎は、同じ名前ということもありすぐに打ち解ける。しかし、血液検査は最悪の結果だった。太郎は即時入院となってしまう…。


(C) 2007 Little DJ film partners
【スタッフ&キャスト】
監督:永田琴 脚本:三浦有為子
出演:出演:神木隆之介 福田麻由子
広末涼子 佐藤重幸 村川絵梨
松重豊 光石研 西田尚美
石黒 賢 原田芳雄ほか
12月15日(土)より、渋谷シネ・アミューズ、
シネスイッチ銀座、
シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー!
太郎(神木隆之介)は野球好きの父(石黒賢)の影響で野球選手を目指し、庭で素振りするのが毎晩の日課。練習のお供はラジオから聞こえる野球の実況中継や、リクエスト番組だった。ところが、突然学校で倒れることが続き、母(西田尚美)に連れられて、叔母のかなえ(村川絵梨)が勤める海辺の病院へ向かう。アメリカ帰りの通称“若先生”(佐藤重幸)と太郎は、同じ名前ということもありすぐに打ち解ける。しかし、血液検査は最悪の結果だった。太郎は即時入院となってしまう…。

ケーブルテレビやデジタル放送、はたまたネットにDVD。これだけたくさんの種類の映像メディアがあるのに、ラジオ放送がなくならないというのは、改めて考えると不思議である。でも、なくなっては困るのだ。私は家にいる時、テレビを見るよりラジオを聞いていることのほうが多い。原稿を書いている時は特に。自分が持っているCDをかけるよりもまったく知らない曲を聴くことや、ふとしたDJの言葉が、パソコンのキーを叩く指先を速めてくれることがある。特に深夜の生放送などは、疲れている時に「ああ今、同じ時間を共有している人がいるのだな」などと考えると、少し勇気をもらえたりするのだ。映像には色んな情報が組み込まれているが、ラジオは音だけである。そのシンプルさが、より強く人に想いを伝えるのではないだろうか。
「Little DJ」は12歳の少年、高野太郎の物語である。一応、宣伝文句には小さな恋の物語ということになっているが、この映画はもっと様々な要素を幅広く含んでいるので、“恋の物語”と限定するのはもったいない気がする。私の中で、恋はあくまでも要素の一つだった。野球とラジオを愛する少年、太郎は突然の病に倒れて入院することになる。退屈な入院生活の中で、太郎はひょんなきっかけから病院内放送のDJをやることになる。 DJ=ディスク・ジョッキーとはレコードを次々とかける様子を競馬の騎手になぞらえて出来た名前らしい。私も中学生の時は夢中でラジオを聴いていた。テレビ世代ではあるのだが、私は洋楽が好きだったので、情報源はラジオしかなかった。毎週、お気に入りの番組をテープに録音して何度も聴いていた。リクエストの葉書だって出したことがある。確かJoe Publicの「I miss you」。
読んでもらいたくて架空の恋の話を書いた。読まれることはなかったけれど、ドキドキしながら誰かに伝えたい曲を電波に乗せて届ける。それを聴いて微笑む人もいれば、涙を流す人もいるだろう。太郎もDJを通して人々の想いを伝える大切さを日々感じとっていくようになる。そして、そんな中で1歳年上のたまきに出会う。
ドキドキ。素敵なドキドキは、いつでもしていたい。素敵なドキドキは、第三者も幸せにする。映画の中の太郎は始終、素敵なドキドキをしているのだ。その姿が、あまりにも愛おしくて、柔らかいため息が漏れてしまうほどだった。太郎を演じている神木隆之介くんとは二度ほど共演したことがあり、彼の素晴らしさは実際に目の当たりにしているのだが、スクリーンを通して見るとさらに良かった。どぎまぎ感が抜群にうまい。というか、撮影中にいきなり話しかけたりすると、普通にどぎまぎしていたから素なのかもしれないけれど(笑)。子役からやっている人はスレているのかなと思いきや、神木くんは一般的な14歳よりも純粋だと思った。あ、でもそれも芝居だったりして。上手だから普通に騙されそうで怖い。とにもかくにも、高野太郎は神木くん以外では考えられなかった。他の役もそうである。最初は太郎の母親が西田尚美さんというのは、少々若いのではと思ったのだが、この映画で1番印象に残ったのは西田さんのシーンだった。病院を抜け出した太郎とたまき。太郎の病状が悪化して、二人は救急車で病院に戻ることになる。動揺しながら謝るたまきに太郎の母は近づいて、平手うちをする。もしここで優しく肩を抱き「いいの、あなたのせいじゃないのよ」と言っていたら、私はこの映画を嫌いになったと思う。わが子を大切に思うがゆえのその平手打ちは、嘘がない素直な行動だと思った。そう、この映画は温かみが溢れているのに全体を通して嘘っぽさがないのだ。これは、かなり難しいことだと思う。人を感動させるためには、嘘が必要なのだが、その嘘がはっきりと露呈すると観客は反対に嫌悪感を覚える。この映画で、私は何度も涙を流したが、嘘のない素直な涙だった。この映画は、自分が浄化されるような感覚に陥る力を持っていると思った。皆さんも神木くん演じる太郎のドキドキや優しさで寒い冬を温かくしてお過ごし下さい。
