宮辻さんは公園のトイレに閉じ込められたことがある。
「それは夜の九時になると自動的にロックされちゃうヤツなの。でも中からは普通に開けられるようになってるのね」
しかし、手動のカギは壊れていた。
「外に友達がいたんだけど、携帯がつながらなかったからドアを叩きまくったの」
宮辻さんの異変に気付いた友人たちが、トイレの前に集まってくる。
「……良子? なんかあったの?」
「宮辻、本当に出られないのか?」
「緊急用の電話は? つながらないって?」
ガンッ。
「ちょっと、やめなさいよ!」
「バカ、宮辻が閉じ込められてるんだぞ」
ドンッ、ガン、ガン。
「まてって、今から警察に……」
「――っ! ちょっと、見て。アレ……」
「なんだぁ、アレ……?」
外にいる友人たちの意識がそれた気がした。
そして一時の静寂の後、立て続けに地の底から吼えるような絶叫が木霊(こだま)した。悲鳴の合間には、重い物がぶつかる音や乾いた音、何か湿ったものを撒き散らかすような音もした。
「み、宮辻。絶対そこを出――」
言い終わる前に「どずんっ」という鈍い音が、弱々しい友人の声を潰した。
それでみんなは? と私が聞くと、
「知らなかったって。あたしが閉じ込められていたなんて。だからたちの悪い夢でも見てたのよ。きっと……」
宮辻さんは警報装置の作動で駆けつけた警備員に救出された。その時、中で半狂乱となっていた宮辻さんを見て、警備員は小さく「またか」と呟いたという。



