塩を与えてはいけません、溶けてしまうから。この女はそういう風に出来ているのですよ。
他に何か知っておくべきことは?
それはご自身で見つけてください。
鬼になりそこなった女を買ってみた。
そいつは、小さな手の中に納まるくらいの箱の中に入っていて、値段は隣の籠に入った極楽鳥の三分の一程度で、売っていたのは年老いた寂しい笑顔を浮かべる鬼だった。
この子を買ってみませんか、お安くしますよ。なりそこないの方が、ずっと飼い易くて便利です。上手く育てれば、とてもよく懐くんですよ。
そんな言葉に惹かれて、何枚かの貨幣を手渡し、私は予想してたのよりもずっと軽い、なりそこないの入った箱を手に入れた。
痩せこけた褐色の肌に欠けた鋭い歯。
殆ど白髪の抜けかけた髪に緑色の瞳。
言葉はわかるのだろうか。
おい、食べるか?
手でソーセージを小さく切って口の辺りに持っていくと、指先に喰いつかれてしまった。
痛いな、これは噛んじゃ駄目なんだぞ。
その言葉を聞いた彼女は凄く下卑びた笑みを浮かべたので、ついムカっとして、これは殺してしまおうと、塩を小箱の中一杯に入れてしまった。
そして、どうなったのですか。
箱の中から、彼女が溶け出して、部屋一杯に広がって匂いがしたんです。彼女は容赦がなくて許してはくれなかった。私は未だに逃げ続ける者です。お茶の中に、夢の中に、彼女は本当の鬼となった姿で、私をいたぶる為だけに存在し続けています。
それが、貴方の身体から塩の匂いがする理由でしたか。



