親父はもう五年前に亡くなっているので、叔父の葬儀には必然的に長男の私が出席することになった。
陰鬱な印象の強い叔父とはもう何年も会っていなかったが、どろんとした目でこちらを見つめる遺影の叔父は、相変わらずもの言いたげに暗そうだった。
父の実家でもあるその家では通夜が終わり、親戚たちがめいめいいくつかのグループに分かれて思い出話を繰り広げている。
煙草を吸おうと台所の勝手口から外に出ると、そこには井戸があった。
いや、井戸であったものと言うべきか。
すでに使われなくなって久しいそれには板が打ち付けられ、上に工具やらなにやらが山盛りに置かれていて、使われていないのが一目瞭然の状態だった。
子供の時分、遊びに来た時は気付かなかったが、今時井戸だなんて珍しい。
そういえば父が夏になるとよく言っていた。
「井戸水は冷たいんだぞ、スイカなんて冷蔵庫で冷やしてもちっとも冷たくならん」――。
一服して、そろそろ戻ろうとすると何かが聞こえた。
耳を澄ますが聞こえない。気のせいか?
猫でも隠れているのだろうかと腰をかがめようとした瞬間、はっきりとその声は耳に飛び込んできた。
「雄二にいちゃんごめんなさい、たすけて」
雄二とは死んだ叔父のことだ。
そして父と叔父の下には、幼い頃神隠しのように突然姿を消した叔母がいたそうである。



