アパートが揺れてます。地震みたいです。すぐ終わり、余震はありません。まだ起きていた私はテレビをつけ、地震速報を確認します。でもどの局も速報は流していません。翌日、会社の同僚に聞いても夜中に地震なんかなかったと。そんなのが一ヶ月くらい続いていました。その日は取引先の会社が倒産したため、事後処理に深夜までかかってしまいました。何とか見切りをつけ帰路についたのは午前一時過ぎ。我が家が近づくにつれ疲労と解放感が押し寄せます。私が住むアパートの隣の二階家に何かいました。人みたいです、一応。とんでもなく大きいんです、五メートルはあるんじゃないかと。灰色のスーツをだらしなく着崩した中年の男です。大男は家の壁と近くの電柱にそれぞれ手をかけ、二階の、ある窓に顔を押し付け、窮屈そうに覗いています。あまりの出来事に呆然としてしまいました。大男が興奮した猿のように自分の体を大きく揺らしました。周囲に振動が広がります。怖くなった私は足音を忍ばせ、迂回してアパートに帰り、そのままベッドに潜り込みました。部屋に入る瞬間、強烈な視線を感じましたが無視しました。気がつくと外が何やら騒がしく……、朝になっていました。二階の自室から窓を開け外の様子を見てみます。隣の家に、建物の半分以上を覆う、黒っぽい巨大な布が重たげにかけられていました。布の端は道路にまで伸びています。家の周りには人だかりが。消防車と救急車も来ています。玄関を遮る布をはらい、中から救急隊員が担架を搬送し出てきます。担架に乗せられた小柄な人物は剃り跡が青々しい丸坊主でした。その家の一人娘の女子高生に似ています。視界の上の方で白いものがチラチラしていました。視線を移すと、電線に白いブラジャーが、一方の肩紐を通した形で、ぶら下がっているのが見えます。独りでに電線の間を行ったり来たりしています。ランドセルを背負った男の子が不思議そうにそれを眺めていました。


