お買徳品に群がるわたしたち。きょういちばんのお買徳品にわたしたちが群がる。でもそのわたしたちのうしろをひっそりと通りすぎるわたしたちもいる。もう食べ物なんか必要としなくなったわたしたち。
ざるに盛られた野菜が、しっとり光っている。スーパーの軒下、野菜がざるに盛られている。真夏の日ざし、灼けた路面。日除けがさしかけられていて、ざるの野菜に直接日はあたらない。新鮮な野菜は日陰で、みずみずしく輝いている。でもその野菜はもう死んでいる状態なのかもしれない。死んだばかりのからだのような、まだ新鮮な食べ物。と、しかしそんなばかなことをレジをぬけたところでせっせと戦利品を袋につめるわたしたちは考えたりしない。考えるようなわたしたちは、早死にするだろう。
重い袋を前にうしろにのせてわたしたちは自転車で帰る。きびしい日ざしなどものともせず、家に帰るわたしたち。太い蛇のように、力にあふれている。でも店の外に一歩出た途端、軽いめまいを覚えるわたしたちもいる。ぎゅっと捩じ切られて蒸発する、意識が一瞬途切れそうになるその瞬間、さようなら、とわたしたちにかけられた声をきく。めまいからもどると、わたしたちに声をかけたわたしたちの後姿はもう小さくなってしまっている。その後姿を追いかけるようにわたしたちも帰ろうとする。陽炎(かげろう)に揺れる、曖昧に交差し分岐した道をたどる。途中、道端に置かれた花束がふっと目に入る。早死にしたわたしたちのための花束。花束の下、土のなか深く、どこまでも滴り落ちていくわたしたち。


