<ゲスト>鍛治壮一さん・阿部昭三郎さん その1


2005年の夏にアフリカのケニアを訪れて、大きな感銘を受けたという萩尾望都さん。シリーズ2回目では、長年のご友人・鍛治壮一さんとアフリカにくわしい阿部昭三郎さんをゲストに迎え、アフリカの魅力を語ります。貴重な写真もお楽しみください。


会場にて(右から鍛治壮一氏、萩尾望都氏、阿部昭三郎氏)

◆アフリカを訪れてみて


萩尾:トークセッションにようこそおいでいただきました。今日は、タイトルが「アフリカとは何か」ですが、お二人にもいろいろうかがいながら、お話をしていこうと思います。私は去年の8月に初めてアフリカのケニアに行ったんですけれど、アフリカに誘ってくださったのが鍛治壮一さんで、旅行の手ほどきをしていただいたのが阿部昭三郎さんです。
鍛治さんとは昔からのお友達で、一緒にアマゾン旅行に行って、アマゾン川を下ったこともあります。今回はカメラのレクチャーをずいぶん受けました。ニコンの一眼レフを買ったんですけど、メーカー選びの相談から、望遠レンズは鍛治さんに借りて、それから露出やら何やら全部、鍛治さんに合わせてもらって、「ここにカメラを置いてこんなふうに撮るように」って、手取り足取り教えていただきながら、撮りました。これからもどんどん教わりたいと思います。

鍛治:初めに聞いていいですか?

萩尾:はい。どうぞ。

鍛治:初めてアフリカ(ケニア)に行ってみて、どんな印象でした?

萩尾:ああ〜、遠かったなあ(笑)。関西空港から出ているエミレーツ航空に乗って、アラブ首長国連邦のドバイ経由で……。

鍛治:石油成金の国、ですよね。

萩尾:はい、電気がいっぱいついてました。そのドバイ空港に降りて、4時間のトランジットのあと、ケニアのナイロビ空港に着きまして。さらに車で5、6時間走って、ナクル湖、フラミンゴのいる湖のある国立公園に行きました。フラミンゴを見て、サイを見て、ヒョウを見て、キリンを見て、とにかく野生の動物を見ましたね。
「野生」って一言でいいますけど、ずっと野生の動物を見ていると、何か、どんどん動物とシンクロしていく感じがするんです。もちろん、こっちはホテルに泊まってるし、車の中から見ているだけなんですが、「あ、私も動物なんだな」「みんな生き物なんだなあ」と思えてくる。
鳥が虫を、動物たちが草を食べていたり、チーターはヌーを食べたりしながら、アフリカの自然のなかでみんなが生きているのを見ると、地球の何十億年かの進化の果てに、これだけの生物が地球に生まれて、アフリカの大地でちゃんと生きているというか、生かしてもらっている。「自分という人間もその一人だし、人類もその一部なんだなあ」と、ちょっとこう「ありがとう地球」というか、歴史と大地に感謝する気持ちが出てくるようなアフリカ旅行でした。とても充実していましたね。

鍛治:旅行中に、「鍛治さんが、『人生観が変わるかもしれない』って話していた気持ちがわかるような気がする」って、言われましたよね。

萩尾:あ! そうです。鍛治さんはアフリカには何回くらい行きましたか?

鍛治:僕は阿部さんよりはるかに少なくて16回です。ただし連続で行きましたけど。

萩尾:行かれるたびに、「アフリカはいいよ、アフリカは人生観が変わるからいいよ」って誘われていたんですよね。それで私は友達を誘ったんですが、友達は「いやべつに人生観が変わらなくてもいいから」って言って(笑)、なかなか一緒に行ってくれなかったんです。

鍛治:さっきもお話に出ましたが、20数年前に、萩尾さんのほかに松本零士さんやちばてつやさんなど7、8人で、世界一周旅行をしたんですよね。それはそうと、初めてナクル湖に行った時、あのものすごいフラミンゴの数に、びっくりしたんじゃないですか?

写真1
ナクル湖のフラミンゴ(撮影:鍛治氏)

萩尾:ナクル湖はかなり大きい湖なんですけど、岸いっぱいが全部フラミンゴで、ピンク色に染まっているんです。いやあ、綺麗でした。

鍛治:夕方とか朝とか光が斜めの時だと、飛んだフラミンゴにだけ日が当たって、「こんな綺麗な景色はない」と、僕もびっくりしました。あそこは当たり外れがなくて、必ずフラミンゴがいますよね。

◆アフリカで初めて撮った写真

萩尾:阿部さんも、長いことアフリカに行ってらっしゃるんですか?

阿部:最初に行ってから39年経ちますが、もうアフリカの虜になってしまって、行かないと自分の人生がないような感じです。100キロになるビデオを担ぐのはきついから、本当に厳しくなったらやめようと思っているんですが、やっぱり行かないと自分が落ち着かない。

萩尾:いろんなものを見たり、撮ったりできますしね。

阿部:そうですね。生きることについて、人間が動物から学ぶことがすごく多いという感じがします。最近では、チーターやライオンの赤ちゃんを一回見つけると、どうやって育って行くのかを追跡調査したくて、もうそこから動きません。大変忍耐がいるんですけれど、三日も四日もつきっきりで。他の車が来ると邪魔されるといけないと思って、警戒して、車がいなくなってから、赤ちゃんのところへ行って撮影するとか。それはもう、鍛治さんと競争でやってますよ。

萩尾:(笑)。

鍛治:阿部さんが萩尾さんのハンティングの写真(写真2)をほめてましたけど、僕も本当に凄いと思うんですよ。撮って2、3日たってから「実はあれ、凄く珍しい写真なの?」って御自分で言ってましたよね。

 写真2
ライオンのハンティング(撮影:萩尾氏)

萩尾:あ、そうなんです。あれはマサイマラの国立公園に着いたその日に、みんなで「夕方まで時間があるから、ちょっと一周しよう」って車を借り出して、クルクルって回っていたんですよね。そしたら「ヌーとライオンがいる」という無線が入って、「じゃあ、見に行こうよ」。着いてみたら、ヌーの群がバーっといて、いくつかあった蟻塚の陰に4頭ぐらいのライオンが待ち構えていたんですよ。狩ろうとして。車が何台も、そばの道に並んで見てましたよね。「今狩るか今狩るか」って感じで(笑)。だんだん夕方になって来て、30分ぐらいたったら、ちょうどヌーが蟻塚の方に歩き出して、そこをバッと、写真のライオンがくわえたんですよね。

阿部:今の話ですけれど、私はアフリカに39年通っているんですが、まだ2回しか撮ったことがないんですよ。それがですね、萩尾さんは初めて行って、着いた途端というか、わずか2、3時間のうちにこれだけの見事なハンティングを撮っている。これはお世辞じゃなくて、なかなかないことなんです。

萩尾:いや、あの鍛治さんも撮ったし、その時車に乗っている人はみんな撮りました。大丈夫(笑)。

阿部:私はピンボケでしたけども(笑)。

(次回更新は4月24日です)
プロフィール
阿部昭三郎(あべしょうざぶろう)
映像作家。アフリカを中心に、動物たちの生態を撮りつづけている。
鍛治壮一(かじそういち)
毎日新聞社を経て、現在航空評論家として週刊ウイング誌にコラム「コクピット」を連載、新聞・テレビの解説でも活躍中。10年前からアフリカのサファリに熱中し、野生動物や大自然を撮影。著書に『ジェットパイロット』『コクピットの男』など多数。日本宇宙少年団理事。航空運行システム研究会常務理事。
 
 

【萩尾望都】
1949年福岡県生まれ。
1969年「ルルとミミ」でデビュー。『ポーの一族』『11人いる!』で第21回小学館漫画賞を受賞。『残酷な神が支配する』で第1回手塚治虫漫画賞を受賞。
際立ったアイデアと世界観、詩的なネーム、確かな画力に裏打ちされた美しい絵柄で、少女漫画の地平を広げてきた。また劇団夢の遊眠社のために『半神』を戯曲化するなど、さまざまなジャンルで活躍を続けている。


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