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第十七回 ぶたランド
温泉に行った。
岩盤浴 というのをしてみる。
水をのんで ねころぶ。
たくさん 汗がでますよ。ということだけど
汗がでない。
でる と言っていたのに出ないと気になってくる。
30分入ったら 少しだけ出た。
背中があつい。
温泉を出て
そのとなりに 「ぶたランド」みたいな
ぶたが 放し飼いになっている
ちいさな公園のようなところがあるので
そこに行くことにする。
ここは いなかで
きょうは平日なので
そんなにひとはいないけど
小さなこどもやその家族が ぱらぱら見える。
入り口をぬけて
唐突に何かいる。と思ったら ぶただった。
ああそうか ここはぶたランドだった。 |
そばによっても にげる、でも よろこぶ、でもなく
ただ、ぶたはぶたのことをしていた。
つまり止まったり 歩いたりしている。
過剰も不足もなく ただ、ぶた自身のこと。
それをみていたら こころがとびあがりそうになる。
こんないきものがいたのか、と思う。
いろんないきものがいるんだなー。
だったら わたしも 生きていけるだろうと思えてくる。
思わぬところで ぶたにはげまされる。
「もうすぐ みにぶた芸 が はじまります」と アナウンスが言う。
ちょっとはずんで そこに向かう。
ぶたステージには
おねえさんと ぶたがいて
ひとりは ぶーた、もうひとりが おそまつ。
出番でもないのに いっこうにステージから退かないのは すもも。
と、みんなみんなに なまえがあるのだった。
そして みにぶた芸は はじまり
ぶたに 低いバーを とびこえさせる、という
芸をさせようとするのだけど
ぶたは そんな気分じゃないらしく ひとつも飛ばない。
おねえさんが あれあれ と困っている。 |
わたしが腰かけた ちょうどななめ前に
4才くらいの女のこと男のこ2人の3人組がいる。
3人は、さっきまで
その辺を歩いているぶたに
「ぶた、ぶた」といって
ぶたの行く先をついてまわっていたが、
今は たかたかとかいだんをかけまわっている。
女のこは 普通の大人が着たら
きっと野暮ったくなってしまうだろう
デニムのロングコートを
さっそうと着こなし、
3人のなかで もっとも かけまわっている。
その すばしこさに 見とれる。
おまえら にんじゃか。
あーそうか にんじゃかもしれないな。
見ていたひとたちは おわるやいなや さっといなくなる。
それは 波がひくようで
わたしは ひとり ぽつんとなる。
フランクフルトとホットミルクを買って
その辺のいすにこしかけて たべる。
牛乳は ぬるくて ねむくなる味だった。
給食を 思いだす。
立ちあがって かえりみち
ぶたを見つけたので しゃがんで見ていたら
ぶたは みじかい草をたべていた。
そばによっても
何も ようすをかえることなく
ただ みちっ みちっ と草をこそいでたべている。
やっぱり ぶたはぶたのことをしている。
こんないきものがいたんだなー。 |
ぶたランドを出て
ランド近くの野菜売り場にいくと さぼてんが置いてあった。
よく見ると
さぼてんに タグがついていて 「よし子」 と書いてある。
「よし子」、という品種なのかとおもって
どきどきしたら ちがって
このさぼてんをつくった
生産者のなまえが 「よし子」、なのだった。
さぼてんを見ながら なまえもかくにんしてまわる。
ほとんどが「よし子」で、すこし「のぼる」もある。
あつかった背中が
いつのまにか つめたくなっている。
きょうは ぶたを見てよかった。
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