みんなの不幸 若竹七海

第十回 (最終回)

 76.6メガヘルツ、葉崎FMが22時をお知らせいたしました。
 さてさて毎週土曜、夜9時から深夜12時まで、葉崎FMがお送りする〈町井瞳子のライトハウス・キーパー〉、このあと、葉崎ローカルニュース、気象予報に続いて人気コーナー「みんなの不幸」なんで・す・が。
 皆さま、お喜びください。あのぺんぺん草さんから久々のメールが来てますよ!
 ぺんぺん草さんからのメールはえーと、二ヶ月ぶり? ずいぶんなご無沙汰で、その間、わが葉崎FMの独自取材によりココロちゃんの動向をそれとなくお伝えしてまいりましたが、今夜、本家で元祖の復活です。
 まあ、なんですね、この二ヶ月、ぺんぺん草さんもかなりたいへんだったみたい。ほら、例の都内で起きた脱線事故、あれに巻き込まれて入院して、葉崎医大付属病院に転院して、退院して通学するようになってからもリハビリに通って。ま、くわしくは後ほどご本人のメールのディレクターズ・カット版でお送りすることになりますが。
 ……あ、そうだ。
 少し前からリスナーの皆さまからご心配いただいておりました。小松原(こまつばら)葉崎市長肝いりの聴取率調査の結果、どうなったんだって。
 ご安心ください。調査結果は今月の市報に掲載されるそうで、それまでは公表できないんですけど、とりあえず、葉崎市とわが葉崎FMの関係はこれまでどおり、ってことになりました。これも葉崎FMを愛してくださる葉崎市民、リスナーの皆さまのおかげでございます。ありがとうございました。これからもどうぞ、よろしくお願いします。
 では、ココロちゃんの話題に行く前に、葉崎ローカルニュースをお伝えいたします。
 葉崎山では土砂によって通行止めとなっていた山道の修復作業が終了し、三日前、約二週間ぶりに開通しましたが、開通と同時にケガ人が出て、ふたたび通行が規制されています。
 先週の木曜日、降り続いた雨のせいで地盤がゆるみ、土砂崩れが起きて、葉崎山西側の通称葉崎山第三山道が土砂と倒木にふさがれていました。この第三山道は道幅が狭く、重機が出入りできないため、県と市の土木関係者により手作業での修復作業となりました。
 一年前にも、ここから数百メートル離れた場所で家屋を巻き込む土砂災害があったことから、ゲリラ豪雨や台風等の大雨災害によりふたたび葉崎山西側付近で被害の発生が予想されます。そのため県と市では、第三山道の道幅の拡張や崖止めなどの対策を協議しているところでした。
 ケガ人は葉崎市在住の17歳の女性で、第三山道の奥に自宅のある作家の角田港大さんの引っ越しの手伝い中に足を滑らせ、約三メートル崖下に転落し、病院で手当を受けましたがケガの程度は軽かったという……い!? 

 

*          *          *

 

葉崎FM〈町井瞳子のライトハウス・キーパー〉
町井瞳子さま
ラジオネーム・ココロちゃんのぺんぺん草より

 

 瞳子さん、お久しぶりです。わたしのこと、覚えてらっしゃるでしょうか。以前、よくメールしていた〈ココロちゃんのぺんぺん草〉です。
 長いことごぶさたいたしました。実は、大ケガをして、長らく入院しておりました。
 6月の初め、わたしの通う葉崎東高校で課外授業がありました。国立能楽堂でのお能の鑑賞会です。開場の1時までに各自自力で能楽堂までたどり着くように、というきわめて大ざっぱな学校側の指示に従って、わたしも10時頃、友人たち5人で出発しました。早めについて、東京でお昼ごはん食べようね、などと言いながらの気楽な小旅行だったんです。
 それが暗転したのは、乗っていた列車の脱線事故。わたしたちは被害の大きかった二両目に乗っていたのでした。
 事故の瞬間のことは、いろんなひとから訊かれたんですけど、正直、よく覚えていません。葉崎から出た直後は、友だちが持ってきた東京のガイドブック見ながら、ここのオムライス食べてみたい、とか、こっちのクレープ専門店ってのもいいかも、なんてしゃべってたんですけど、事故が起きた頃にはそれにも飽きて、みんななんとなくうとうとしてたんです。
 ひどい音がして目が覚めて、誰かにものすごい大きな声で呼びかけられて……気がついたら病院にいました。
 あれだけの事故で五人ともケガですんだのは不幸中の幸いだって、親からも教師からも友だちからも言われたんですけど。
 亡くなった方がいることを思えば、ホントにそうなんですけど。
 大惨事大惨事って言われても、記憶がないからピンとこないんです。ただ、目が覚めたら右脚にギプスはめられて、おなかにでっかい手術跡ができてて、ベッドに固定されてて、トイレにも行けない。生まれて初めて感じる全身の倦怠感、痛み、イライラして不安でしかたがない。
 この状態で、よかったね、と言われても……いや、よかったんだ、と思うようになったのは、事故のことをきちんと説明されてからでした。最初のうちは、誰に尋ねてもくわしいことは教えてもらえなかったんです。いわゆる、腫れ物に触るような扱い、だったわけですね。
 わたしの席は車両の連結部分にいちばん近かったんですが、あとで新聞の現場写真を見てビックリ。わたしが座っていた場所はこてんぱんに破壊されてました。これならなるほど、幸いだったと言えるかもしれません。
 とはいえ、他の友だちよりもケガが重く、みんなが退院していくなかひとり取り残されて、東京駅近くの病院だから親も三日おきに顔を出すのが精一杯。なんか、世の中に自分ほど不幸な人間はいないんじゃないかって気になってしまいました。

 

 でもね、瞳子さん。すごい奇跡があったんですよ。
 最初にメールを送ったとき、こう書いたの覚えてますか。はじめてもらったバイト代で、携帯用の小さなラジオを買ってしまった、って。
 事故のときもあのラジオ、持ってたんですけどね。なんと、ブジだったんです、ラジオ。フツーに使えるの。
 しかも、なぜか葉崎FMが聴ける。
 東京駅の近くなんですよ。葉崎のミニFMが聞こえるはずないってみんな言うんだけど、わたしもそう思うんだけど、でも聴けるの。ときどき雑音が入るし、明瞭じゃないんだけど、ちゃんと聞こえるの。
 それに気づいた途端、わたしは自分でも驚くほど元気になりました。見捨てられてないっていうか、ちゃんとわたしは葉崎につながってるんだって思えたっていうか、そんな気分になったものだから。

 

 心が元気になると、傷の治りも早くなるみたいですね。2週間半後、わたしは転院を許されて、葉崎医大付属病院に移りました。
 そうなると、友だちも授業のノート持ってお見舞いに現れるし、家族も毎日来てくれる。おまけに最初の病院より葉崎医大のほうがごはんもおいしい。
 葉崎医大はJA葉崎と提携してて、とれたてのおいしい野菜や海の幸をどっさり使った病院食が味わえます。葉崎特産野菜のクリームシチューもおいしいし、ふだん苦手なイワシの梅煮もけっこういける。ラタトゥーユは最高。一度なんか、牛カツが出たんですよ。でもイチオシはゴーヤの味噌いため。これはホントにごはんがすすみ、隣のベッドのおばさんが残したごはんまでもらって食べてしまいました。
 てなことやってて事故から一ヶ月後、いざリハビリを始めようとして鏡を見て、わたしはガクゼンとしました。
 誰この丸い女。
 ま、おかげでリハビリは担当者に驚かれるほど熱心に取り組めました。運動しなくちゃ痩せないですもんね。そのせいか1週間で松葉杖をつけば歩けるようになり、退院できたし通学もできるようになった。
 なにがどう幸いするかわからないものです。

 

 あの、瞳子さん。
 たぶん瞳子さんはわたしのことなんかより、ココロちゃんのことを聞きたがってるんじゃないかな。
 葉崎FMを聴いていたかぎりでは、瞳子さんたちもココロちゃんと接触してたみたいだから、わたしの話はもういい、のかもしれないけど。

 

 会ったんです。わたし。ココロちゃんに。

 

 三日前のことです。わたしはいつものように学校帰りにリハビリのため、葉崎医大病院に立ち寄りました。
 すでに松葉杖の操縦にも慣れて、あの患者さんでごったがえす受付ロビーをすいすい進んでたんですが、エスカレーターに乗って、やれやれと思った瞬間、周囲からけたたましい悲鳴があがりました。上から女の子が転がり落ちてきたんです。
 うわっと思ったけど、よけられません。幸いにして女の子は少し上で仰向けに転倒し、頭がわたしの二段上にある、という状態でさかさまに止まりました。
「えっ……うそ?」
 わたしは思わず言いました。ココロちゃんはさかさまの状態でわたしを見て、
「あ。どうもぉ。ていうか、いたぁい。起きれなぁい」
 半べそをかいています。まぎれもなく、ココロちゃんでした。
 ホント言うと、最後はケンカ別れみたいな状態だったし、どこかで出くわしたとしても気づかなかったことにしてムシするつもりだったんです。
 触らぬ神に祟りなし、っていうか。
 だって、ツメの間の破片をとってあげなかったら、ほどなくして大ケガ。これまでのココロちゃんをめぐる状況を考えると、近寄りたくないって当然でしょ?
 病院のベッドでわたし、ずっと考えてました。このケガ、ココロちゃんの祟りかなって。本人にそんなつもりはなくても、彼女の守護霊怒らせちゃったかなって。
 我ながらバカバカしいよな、そんなの、と思う一方で、やっぱりこわかった。
 けど、なんせ相手は仰向けで、頭が下になってて、いたぁい、って言ってるんだもん。ムシしようがない。
 わたしはココロちゃんを助け起こすことにしました。
 でも、松葉杖をついてるわ、相手は妙な体勢だわ、もたもたしているうちにエスカレーターが次の階についてしまい。ココロちゃんの足はいちばん上の段にぶつかって、頭は昇ってくる段にぶつかって、ごんごんいっている。そのつどココロちゃんが、いたぁい、いたぁい、と叫ぶ。
 エスカレーターのいちばん上の段差なんてほとんどないんだから、両足をちょっとあげれば押し出されると思うんだけど、なぜかココロちゃんは押し出されようとするたびに抵抗し、だから頭がごんごん。周囲の人びとは助け起こすのも忘れて大笑いしていました。

 

 ようやくココロちゃんがエスカレーター地獄から解放されて、わたしたちは最上階のスカイレストランに行きました。
「今日は朝からなんにも食べてないんですぅ」
 というココロちゃんにカレーを買ってあげると、涙目でありがとうを連発する。でも、わたしが松葉杖をついていることについては全然気づいてない。あるいは気にしてない。あいかわらずのココロちゃんでした。
「ところで、なんで病院にいるの?」
「崖から落ちたんですぅ」
 カレーを口いっぱいにほおばりながらココロちゃんは言いました。
「あのねぇ、最近、親切にしてくれた小説家の先生のお引っ越しでぇ。お手伝いしようと思ってトラックから荷物出して運ぼうとしたら足が滑ってぇ。荷物ごと崖下に落ちちゃったんですぅ」
「たいへんじゃん」
「泥だらけになってぇ、手首ひねっただけだしぃ。大丈夫って言ったんですけどぉ、どうしても病院に行けって言われて。だから来たんですぅ」
 確かに両手に膏薬が巻いてある。整形外科が二階にあることを考えると、治療を終えて一階に下りるため、なぜか昇りのエスカレーターに乗ろうとしてけつまずいたということらしい。
「ひとりで来たんだ」
「うん。一緒に落ちた荷物の中身がパソコンでぇ。書きかけの原稿とかたっぷり入ってるって、みんな青くなっててぇ。かまってられないからひとりで行きなさいって言われましたぁ」
 要するに追い払われたわけだ。たしかにパソコンのほうが大事っちゃ大事だわな。
 〈町井瞳子のライトハウス・キーパー〉を聴いていたから、ココロちゃんが〈星の滴教団〉に入っていたことも、そこで生活していた場所をうっかり燃やしちゃったことも知っていました。で、いまはハードボイルド作家の角田港大先生のお世話になっていることも。けど、「書きかけの原稿とかたっぷり入ってる」パソコンを落としちゃって、これからも先生のお世話になれるのだろうか。
 おいしそうにカレーをぱくつくココロちゃんの髪には、泥がこびりついています。手首の他にもすり傷がいっぱい。
 ツメの間に突き刺さった壺の破片を抜いてあげることすらできなかったわたしに、ココロちゃんを心配する権利などない、かもしれません。でも、このコこの先、どうなるんでしょうか。
 気がつくと、ココロちゃんはカレーを食べ終わって、じっとこっちを見てました。
「……なに? 食べたりない? おそばかなんか追加する?」
「わたしねぇ、仕事みつかったんですぅ」
 ココロちゃんは言いました。
「角田先生の奥さんがみつけてくれたんですぅ。伊豆大島の海水浴場にある海の家で、夏の終わりまで働くんですぅ。働いてるあいだは、海の家で寝泊まりしてかまわないってぇ」
「そ、そうなんだ」
 わたしは心底ホッとしました。よくよく考えてみれば、海の家で寝泊まりって、それこそホームレス一歩手前なんじゃないかって気もしますが、まさかよしず掛けってこともないだろうし、夏だけならいいかもしれない。食べ物だってたくさんあるだろうし、農家の物置小屋に押し込められているよりも、一酸化炭素中毒になるような部屋にいるよりも、警察に目をつけられてる新興宗教にいるよりも、きっといいはず。
 葉崎を離れたとしても、べつに日本を離れるわけではないのだし。
 海はつながってるし。
「大島って遠いらしいんですけどぉ」
「それほどでもないよ」
「葉崎から離れちゃうけどぉ」
「いつ出発するの?」
「明日なんですぅ」
「明日、なんだ」
「はいぃ……」
「でも、よかったよ。仕事と住む場所が見つかったんだから。ホントによかったよ」
 ココロちゃんはなにも言わずに、こくんとうなずきました。

 

 スカイレストランを出て、一緒にエスカレーターで一階のロビーまで降りました。
「……じゃ、わたし、リハビリ室に行かないと」
 ココロちゃんは黙ってました。わたしはせいぜい明るく言いました。
「元気でね」
 それでも黙っているココロちゃんにうなずいて、わたしは回れ右をして、もう一度エスカレーターのほうに歩き出しました。
「ご、ごめんね」
 背後で小さな声がしました。知りあったばかりの頃、お弁当屋さんでわたしが店長に怒られた帰り道、もういいよ、と言っても、わかったから、と言っても、わたしの背中にずっと言っていたように。
 ごめんね、ごめんね、ごめんね……。
 ココロちゃんが謝らなくっちゃならないことなんか、なんにもないのに。勝手にココロちゃんを新種の疫病神みたいに思って、面白半分につっついて、ラジオのネタにして楽しんで、たかがツメの間の破片すらとってあげられなくて、なんにもしてあげなかったのは、わたしのほうなのに。
 ていうか、ココロちゃんはホントに疫病神だったのかな。
 わたしは大ケガをして不幸かもしれないけど、ホントは不幸どころじゃなかった。死んでたっておかしくないような目にあって、でも死なずにすんだ。元気になった。松葉杖だってもうすぐとれる。
 立ち直れる程度の、ちょっとした不幸に、ほんの少し見舞われただけ。
 気がついたら、ココロちゃんの「ごめんね」がだいぶ後ろになっていて、わたしは振り返りました。ココロちゃんは転んでて、床にはいつくばりながら、まだ、ごめんね、ごめんね、と繰り返してました。
 わたしはココロちゃんのところへ戻りました。よいしょ、と言って立ち上がったココロちゃんに、なにか言いたかった。
 でも、なにも思いつかなかった。もじもじしているうちに、ポケットのラジオを思い出したんです。
「これさあ、けっこう遠いとこの音波も拾うみたいだから」
 わたしはラジオをココロちゃんの手に押し込んで、言いました。
「ひょっとしたら、伊豆でも葉崎FMが聴けるかもしれないし」
 だから、それなりにつながってられる。こいつは奇跡のラジオなんだから。
 ココロちゃんはなにか言おうとしたみたいでした。でも、ただ、嬉しそうにラジオを受け取って、ぺこんとおじぎをして、行ってしまいました。
 わたしは葉崎医大付属病院のロビーのガラス越しに、ココロちゃんの姿を見送りました。あのチワワを思わせる小さな身体が、歩道をちょこちょこと遠ざかっていくのが、にじんで見えました。

 

 次の瞬間。蛇行して猛スピードで走ってきたトラックが、なぜか車体半分歩道に乗り上げたんです。わたしは自分でもびっくりするような悲鳴をあげて、松葉杖を操って外へ飛び出しました。
 歩道には、ココロちゃんが尻餅をついてボー然と座り込んでいました。ココロちゃんの身体ぎりぎりのところに、トラックのものとおぼしきぶっとい黒いタイヤ痕が残ってて。
 そのタイヤ痕のど真ん中に、奇跡のラジオの残骸がへばりついていました。

 

 瞳子さん。これでわたしとココロちゃんの話は終わりです。たぶん。
 見送らなかったけど、元気で伊豆大島へ旅立ったんじゃないかと思います。
 だからもう、瞳子さんにメールをお送りすることもないでしょう。新しいラジオ専用機を買うかどうかもわかりません。少なくともいまはそんな気になれないし。だから、番組をこれからも聴くかどうか、不明です。
 でも、〈町井瞳子のライトハウス・キーパー〉のスタッフと瞳子さんがこれからもずっと元気で、楽しい放送を続けてくださいますように、かげながら応援しています。
 さようなら。お元気で。

 

*        *        *

 

 ……以上が〈ココロちゃんのぺんぺん草〉さんからの最後のメールでした。
 実を言うとね、このメール読んで、瞳子ねえさんはちょっと泣いたね。けど、一瞬で涙乾いたね。で、思った。ココロちゃんとぺんぺん草さんらしい終わり方だなあって。
 てか、これで終わりになるんだろうか。終われないんじゃないだろうか。
 そんな気もします。
 でも、とりあえず、ご好評いただいてきた「みんなの不幸」のコーナー、今日で最終回とさせていただきます。これまで投稿してくださった皆さま、ありがとうございました。ええ、最終回。そうなんですよ、サイトーくん。ま、万一、ココロちゃんが戻ってきたら、再開するかもしれませんけどね。
 来週からは夏の新コーナー「真夏の過失」が始まります。夏は恋の季節、熱中の季節、テンションのあがる季節。だからこそその熱がからまわりして、とんでもないトホホが起こる。皆さんの真夏のため息、ぜひ投稿してくださいね。リクエストともども、お待ちしてま~す。
 ではここで、76.6メガヘルツ、葉崎FMがニュースをお届けします。
 緊急速報です。本日午前9時過ぎに小笠原諸島の西側で発生した地震により、気象庁が関東中部の太平洋側に津波警報を発令しておりましたが、先ほど、伊豆大島に津波が到達し、海岸付近に被害が出ている模様です。この津波はまもなく葉崎市沿岸にも到達するみこみです。予想される津波の高さは推定で1メートル50センチ前後、キケンですので絶対に海岸には近づかないでください。また、現在、猫島海岸道路と葉崎西海岸線の全線と、葉崎=藤沢バイパスの一部区間が通行止めになっています。
 繰り返します。本日午前に発生した海底地震により発生した津波が先ほど伊豆大島に到達し、海岸付近では海の家が流されるなどの被害が出ていま……。
 ちょっと!
 

 

 

 

 

   ※今回で「みんなの不幸」の連載は終了いたします。
    ご愛読いただき、ありがとうございました。
    本連載分に書き下ろし原稿を加えた単行本を、ポプラ社より年内に刊行予定です。

プロフィール

若竹七海(わかたけ・ななみ)

1963年東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒業。1991年『ぼくのミステリな日常』でデビュー。日常から切り取ったように事件が起こるコージー・ミステリの旗手。長編・短編を問わず、著書多数。本連載でも登場している海辺の街「葉崎」を舞台にした作品に、『古書店アゼリアの死体』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『クール・キャンデー』『猫島ハウスの騒動』『プラスマイナスゼロ』などがある。

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